敗戦の弁を語る有田芳生氏
敗戦の弁を語る有田芳生氏

 安倍晋三元首相の死去に伴う衆院山口4区(山口県下関市、長門市)補選で、70年にわたって自民党支配が続く保守王国に挑んだジャーナリストの有田芳生氏(71)。安倍氏の妻の安倍昭恵氏が全面的に支援し、「安倍後継」を標榜する自民党新人の吉田真次氏(38)らが立候補した選挙区だ。事実上の一騎打ちに敗れはしたが、投開票から2日たった4月25日、“保守リベラル”として戦った選挙を、爽やかに「何の悔いもない」とAERA dot.の取材に応じるとともに、「下関って統一教会の聖地なんです」と語ったことの真意と、起きた大騒動についても振り返った。

【写真】支援者に頭を下げる有田芳生氏

 有田氏は4月11日の告示から22日までの12日間の選挙戦を、こう振り返る。

「ベルトの穴が2つ分、ゆるくなりました。無謀な戦いだと言われましたが、朝7時半から夜まで、一生懸命、山口の選挙区を駆け巡りました」

 選挙中、有田氏は「安倍元首相は午後8時の開票と同時に“当選確実”の常連だったけど、それは阻止したい。午後8時を過ぎても、9時になっても“当選確実”が出ないね、というふうにもっていきたい」と抱負を語っていたが、フタを開けてみれば、やはり今回もNHKはゼロ打ち(午後8時の開票と同時)で、吉田氏の「当選確実」の速報を流した。

 有田氏はサバサバとした感じで言う。

「どこまでいけるかなと思っていたけれども、報道各社の情勢調査から、直前には午後8時には出るな、それはしょうがないことだと覚悟していました」

 5人が立候補した山口4区補選。4月23日の投開票の結果は自民党公認の吉田真次氏5万1961票、立憲民主党公認の有田芳生氏2万5595票。吉田氏に2万6000票余りの差をつけられ、有田氏は敗れた。

 有田氏の両親は鳥取の学校で知り合い下関市で仕事をしていて長門市で結婚し、新婚生活を送ったという。だから、全く無縁の土地ではない。街頭演説では、こう語っていたのが印象的だった。

「敗れることが恥ではないのです。敗れるかもしれないなと思って、闘わないことが恥なんです」

 その真意を聞くと、「もともと勝てるはずのない挑戦なので、面白い選挙をやろうよということで12日間やった。選挙スタッフも、『こんな面白い選挙はなかった』と楽しみながら戦ってくれました。これまで6回選挙をやっているが、一番面白い選挙でした。街頭では圧勝でしたよ。相手陣営はほとんど街頭をやらなかったから。こっちはすごい激励、歓声。ホント、最高の選挙でした。やっぱり野党は闘わないといけない。候補者を出せないとかそういうことではなくて」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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