18歳人口の縮小は大学にとって死活問題。私大では生き残りをかけ、あの手この手で独自性を打ち出すことで学生を確保する私大が増えている。国際教育に力を入れる大学を調査した。
渡戸佳乃さん(武蔵大学2年)は、同大学経済学部の東郷賢教授がパラレル・ディグリー・プログラム(PDP)について説明する動画を偶然見て、合格していた慶應義塾大学をやめ、入学した。
PDPは2015年に武蔵大学が日本で初めて導入したプログラム。同大学にいながら、ロンドン大学の学位が取れる。
「将来、海外で学びたいと思っていましたが、家庭が豊かなわけではありません。PDPなら親の負担も減る。これしかない、と思いました」
イギリスの大学評価機関、クアクアレリ・シモンズ社の「QS世界大学ランキング(経済学分野)」では、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(LSE)が7位。大学教授や生徒の質に重点を置いたランキングとして有名で、東京大学は29位だ。
PDPの開講以来、開成や桜蔭など難関私立校の生徒もロンドン大の学位取得を目的に武蔵大へ進学しているという。
「海外の大学と日本の大学で、複数または共通の単位を与える制度は以前からありますが、それぞれの大学で成績を評価するため、基準が二重になってしまいます。PDPは4年間、世界中の学生をロンドン大学が同一規準で評価する仕組みなので、どの国へ行っても通用する共通スコアなのです」(東郷教授)
PDPを履修するには、「IELTS(アイエルツ)」という英語の試験で5・5以上のスコアが必要だ。これは日本の英検でいうと準1級に相当する。1年次は「インターナショナル・ファウンデーション・プログラム」という留学生向けの進学準備コース4科目を履修し、翌年4月の試験に合格すれば、2年次から「インターナショナル・プログラム」(本格的な国際プログラム)に進める。入学後の半年間を除き、授業はすべて英語。PDPの科目は武蔵大学の科目でもあるため、卒業次には武蔵大学とロンドン大学、二つの学位を取得できる。