一年を通して観光客で賑わうベニスビーチのど真ん中で、1979年から愛され続ける「ローズ・カフェ」。コーヒー一杯からディナーパーティーに至るまで、あらゆる用途で使えるカフェレストランだ。15年11月のリニューアル後も、入り口の両脇に大きく描かれたピンクのバラは変わらずある。
早朝に行くと、焼きたての菓子パンの香ばしい匂いが出迎えてくれる。お店に一歩足を踏み入れると、まず目につくのが高い天井とその広さ。クイニーアマンやスコーンなどの焼き菓子を横目に左に進めばカフェ空間が広がり、右側には食事ができる半アウトドアスペースが続く。両スペースの中央には、賑やかなオープンキッチンも。
生まれ変わったローズ・カフェを手がけるのは、ニューヨークやロサンゼルスなどで名を馳せてきたシェフのジェーソン・ネローニさん(41)。見た目はちょっと怖いが、ロサンゼルスではシェフのタトゥーは決して珍しくない。よく見ると、人参やカブなどの野菜が描かれていて、仕事への“プロ意識”の高さがうかがえる。
彼のシェフ経歴は、ディズニーランド内のレストランから始まった。その後、バークレーにある有機野菜を使ったカリフォルニア料理のレストラン「シェ・パニーズ」などで働いてきた。スペイン政府に“Culinary ambassador(料理の大使)”として招かれたこともある。
新鮮な食材を生かした南カリフォルニア料理を基盤にしながらも、メニューには世界中を旅して得たインスピレーションが反映されている。朝食で人気なのは、カリフォルニアでは定番の「アボカドトースト」。シンプルなようで、味も見た目もお店によってさまざま。ローズ・カフェでは、レモン、ペッパー、ピスタチオを使い、半熟具合がちょうどいいアヒルの卵をトッピングしている。
インドのスパイスを利かせた豚肩肉のグリル、また帆立の柚子胡椒添えもイチ押し。柚子胡椒は、最近、ロサンゼルスのレストランでよく見かけるようになった。イタリア・ローマの名物パスタ「カチョ・エ・ペペ」(カチョはチーズ、ペペは胡椒の意味)は、隠し味に赤みそを使用。意外な組み合わせのようで、チーズの濃厚さに、赤みそがさらに深みを足している。
お洒落な街、ベニスビーチにあるだけあって、店内にはモデルのような美男美女がちらほら。どの時間に行っても比較的混んでいるのは、映画業界を筆頭に、ロスがフリーランスで仕事をする人が多い街だからかもしれない。ローズ・カフェでは、朝、昼、晩、ブランチ用のメニューがあるため、4通りの楽しみ方ができる。(ライター・三橋ゆか里)
※AERA 2018年1月22日号