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中内:やはり非常に違います。同調圧力の強い日本はリーダーシップをもっている人材が育ちにくい傾向があると思います。アメリカはそもそも多様性に富む国なのでそれをまとめていくことが大変だということもあるでしょうが、小学校からリーダーシップに注目した教育が行われています。たとえば、人前で話をするのもその一つで、リーダーシップがあるかどうかの大きな評価のポイントになります。強いリーダーシップのおかげで、個人としても全体としてもリスクをおそれず、行動できるわけです。

 日本はリーダーを育てるというところに、あまり労力をかけていない。だから、良いリーダーがなかなか出てこなくて、問題解決に非常に時間がかかったり、責任回避のために先延ばしの繰り返しになったりする。研究者、あるいは政治家を見るまでもなく、あらゆる分野でリーダーシップの不在を感じます。だからリスク回避の行動が個人的にも社会的にも続くのだと思います。

 日本のリスク回避やリーダーシップの不在は、アメリカ以外の国々と比べても顕著でしょう。たとえば、私のスタンフォードの研究室には、大学院生やポスドクが日本を含め、世界中からやって来ます。日本の一流大学出身者は、言われたことはきちんとこなすし、頭もいいし、良い人が多いです。しかし、非常に迫力不足。自分で課題を見つけて周りの人を巻き込んでバリバリやっていくタイプがほとんどいません。

 一方、日本以外の国々から来ている人たちは、みんな目が輝いている。やる気十分で、一旗揚げてやろうという強烈な意気込みを感じます。

 こうした違いには、日本の社会が非常に安定している影響があると思います。いわれたことだけやっていれば大丈夫、右のものを左に置けばオーケーというリスク回避の風潮が、若い人たちにも蔓延しているのでしょう。良い国であることはたしかですが、問題は今の日本の豊かで安定した生活が厳しい世界経済の競争のなかでこの先も続くのかということをどれくらい多くの人が認識しているのでしょう。そういう危機感がないこと自体、大きな問題だと思います。