日本は同調圧力が強いと言われます。日本の教育制度では、みんなで仲良く暮らせる社会を作るんだという発想がすごく強い。また妬みの文化でもあるので、多くの親は自分の子どもがあまり目立たず、まわりに迷惑をかけずに学校生活を送ってくれることを願っているように見えます。その辺の意識から変えていかないと、日本の教育制度は変わらないと思います。
一流の国に追いつけ追い越せでやっていた頃の日本は、いわゆる平等主義に基づくチームプレイが重要だったのでしょう。しかし今やグローバル・エコノミーのなかで互角に戦っている国です。その状況のなかで、三流国家にまで逆戻りしつつある印象です。それを食い止め、成長していくためには、やはりクリエイティブな人材を育てなければいけない。クリエイティブな人は個性が強く、同調性のないケースが多いと思います。そこを一般の人もよく理解し、欠点のない子どもを育てるのではなく、子どもの長所や個性を生かす教育を重視するよう、見る目を変えていかないと、教育制度も簡単には変わらないでしょう。
筒井:教育社会学でそういう研究はたくさんあります。幼稚園や小学校のレベルから集団のなかでまわりの子どもと協調的に立ち回ることがとても重視される。社会に出ても自分の会社や研究室で人間関係をうまく運ばせることが一番大事となっている。まさに同調圧力がすごく強調される社会なので、「出る杭は打たれる」という感覚がずっと子どものころから植えつけられているというわけです。
実際、教育の中身も個性を発揮する、他の人と違うことをやるといったことが大事にされていません。大学入試もAO入試(総合型選抜)が増えてきてはいますが、相変わらず共通テストで画一的な知識の習得が強調されています。
アメリカでも多くの親が自分の子どもをいい大学に入れたいのは同じです。ただ、そのために親がなにをするかというところが違います。日本では、塾に通わせて画一的なテストでいい点を取るスキルを高めることが中心です。