一方アメリカでは、スタンフォードの入試もそうですが、SAT(大学進学適性試験)の点数を見ない大学がすごく増えています。アメリカの大学入試ではなにを問われるか。「今までにあなたはなにをやってきましたか」「あなたは人生でなにを成し遂げたいですか」「そのために大学の4年間はどう役に立ちますか」といった問いに対して、しっかり説明できないと大学に入れません。だからアメリカでは、中学生ぐらいからそういうことを考え始めるケースが多いです。

 アメリカの子どもは、日本のように塾に行くだけではなく、なにか事業的なことをはじめたり、バイオリンやバスケットボールなどに打ち込んで成果を出そうとしたりする。親も子どもの自主性を重視してサポートします。日本とは教育のあり方が根本的に違い、それに最も大きな影響を与えているのは受験制度だと思います。

中内:アメリカの大学は入試にすごく時間も労力もかけます。一方で、日本の大学は試験の点数で合否を決めるほうが客観的でいいと、単純に済ませている印象です。アメリカの大学は「なにが客観的なのか」というところから問い直し、いろんな面からその個人を見て判断します。大学教育の成果に大きな違いが出てくるのは、ある意味当然でしょう。

筒井:こうした教育の影響で、リスクに対する考え方にも違いがあります。減点主義の入試制度に象徴される日本ではリスクを回避する個人の生き方、社会のあり方が強くなり、昭和の頃は良かったが、今の時代に必要な教育や研究、産業の発展に相当マイナスに働いていると思います。加点主義で個性やそれぞれの長所を伸ばそうとするアメリカでは、リスクをおそれず新しいことに挑戦する人が育ちやすいと思います。

 中内先生は、日本にいる研究者とアメリカにいる研究者の違いについて、特に起業に関して、どの程度リスクを取るのか、どの程度我慢できるのか。その辺の差を実感されていると思うのですが。

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