「他国の生徒たちは、多少英語ができなくても、堂々と発表していた。世界を肌で感じることができました」(山村さん)
来春卒業する前田さんは広島大への編入が決まっており、大学での研究を楽しみにしている。
●2割超が大学に“編入”
時間をかけて学び、専門性も身につける高専の学生には、同じ教育機関からも熱い視線が送られている。前田さんのように大学に編入する道が広がっているのだ。
通常、3年生へ編入するといい、16年度の国立高専本科卒業生9千人のうち、大学への編入率は23.6%。東大をはじめ、京大、東工大など難関大に進む学生も多い。17年は東京大へ13人、東工大へ35人が編入した。
東大院で建築学を専攻する石田崇人さんは、小学校の頃から建物好きで明石高専(兵庫)の建築学科に進学。14年に卒業し、東大工学部に編入したという。大学卒業時には各学科1人に与えられる工学部長賞を受賞。卒業制作でも、学部の最優秀賞を獲得した。
「すでに建築の専門的な研究を高専で行っていたので、同期に比べて広い視点で学ぶことができたと思う」(石田さん)
現在の研究テーマは、建物を長持ちさせるためのメカニズムの解明で、「人が住む家には、人の記憶が残る。そんな家をいつまでも残したい」という。
企業や大学、最先端の現場から注目される高専の強さはどこにあるのか。国立高等専門学校機構学生指導支援室・本江哲行室長は言う。
「高専の授業は知識と実体験・実習のバランスが良く、実践的なカリキュラムで学ぶため即戦力として社会的ニーズも高い。そこが重宝されているのでしょう」
今、高専が熱い。(ライター・柿崎明子)
※AERA 2017年8月28日号