●どんな授業をつくるか

 1年次の授業は「コラボレーション」がテーマ。タブレットを使い、ロイロノート・スクールというアプリで、教師と生徒が情報を共有する。教務部長の米澤貴史教諭は言う。

「担当教諭が毎時間、どんな授業を作るか3~4時間かけて話し合います。生徒たちは、明らかに積極的になりました」

 授業は3~6人の班を作り、楕円(だえん)形のテーブルを囲んで行う。1学期は中野区の白地図でアート作品を作ったり、4コマ漫画の最終コマの吹き出しを考えたりと、自由な発想を楽しんだ。2学期は自分たちのアイデアを電子タグ「MESH」でプログラミングし、形にした。

 3学期はタブレットを離れて英語劇に挑戦。柱となるストーリーは、客が、食べ終わった皿に虫を入れ無銭飲食を図るというもの。「授業はめっちゃ楽しい」という渡邊里奈さんの班では、皿の中に入っているのは虫ではなくクラスメートなのに、誰も気づかない、というシュールな内容に膨らませた。

●発信する力が重要に

 一方、多くの学校で力を入れているのが記述力の養成だ。先駆けとなった海城(新宿区)は、1992年から中3生が「卒業論文」に取り組んでいる。その狙いについて、社会科・山本憲明教諭は「当時は冷戦が終わり、世界の流動化が始まった時代。社会科の教師が、既存の知識を暗記するだけでなく、生徒に社会的な関心を持ってほしいと導入を決めたようです」と話す。

 中学では、地歴公民と並行して週に2時間総合学習が設けられており、探求型の授業に充てられる。1年次から新書本のブックレポート、外部取材、フィールドワークとスキルを積み、いよいよ3年次、集大成として卒業論文に取り組む。1~2学期はクラスを2分割しゼミ形式で中間発表を行い、11月までに400字詰め原稿用紙30~50枚程度の論文を仕上げる。

「北方少数民族ウイルタの戦前と戦後」をテーマに執筆した生徒は、ツテをたどって関係者に取材を依頼し、2度北海道へ出かけ、対面取材を13人、メールや電話取材を5人に行った。文献も丹念に調べ上げ、ウイルタが戦前戦後にたどった苦難の歴史を追った。

 中高一貫校で変化を続ける授業。背景にあるのは、大学入試改革だけではないと首都圏模試センター教務情報部の北一成部長は言う。

「若い保護者は海外経験も豊富で、これからは発信する力が重要だと感じている。そこで、新しい教育を取り入れている学校に着目しているのです。この流れは今後も加速するでしょう」

(ライター・柿崎明子)

AERA 2017年3月27日号