「校是の通り華美はダメという方針で、持ち物やスカート丈などもうるさいですね。自発的な授業が多く、プレゼン力が身についたと思います。ただ勉強は自主性に任せて、あまり面倒はみてくれない。中等部から優秀な子が入ってくるので、大学まで進学できるか心配です」

 勉強で後れを取らないように、塾に通っているという。学校でも学力向上のため5、6年生を対象に、教育に長けた専科教員を採用し、初等部と中等部の連携授業を強化している。

●全くぶれない慶應

 ブランド力は歴史の長い慶應が勝る。明治7年創立と、142年の歴史。志願書には、志望動機の他に『福翁自伝』を読んだ感想を書かなければならない。小学校受験総合研究所代表取締役の、高橋秀幸氏は言う。

「大学のOB・OG会でも、慶應の三田会は特に結束が固い。付属小学校は、その中枢となる人材の育成を担っています」

 入試はペーパー試験がなく、模倣体操や行動観察と絵画・制作のみ。クラスはK・E・I・O組の4クラスで、6年間クラス替えがなく担任も代わらない。

「小学校受験で保護者の面接のない学校はめずらしい。教育方針といい、入試方法といい、慶應は全くぶれないですね」(高橋氏)

 2013年に開校した慶應義塾横浜初等部は、初年度から1297人と定員の12倍にあたる志願者を集めた。

「説明会で『幼稚舎とは違う』と断言しているように、ブランドよりも中身で勝負するという気概を感じます。言語技術教育など、時代に即した教育を実践しています」(石井氏)

 新しい学校だけに設備も整っており、保護者の満足度も高い。ただし幼稚舎は普通部、中等部、湘南藤沢中等部から進学先を選択できるが、横浜は湘南藤沢中高と、進路が限られている。受験を考えているならブランドだけでなく、教育の中身、大学まで見据えて選ぶことが大切だ。(ライター・柿崎明子)

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