「食べさせた後、少なくとも60分間は子どもの様子を観察する必要があります。忙しくて見られないというくらいなら、リスク管理の観点から最初からやらないほうがいい」(今井医師)

 子どもにも根気が必要だ。治療で原因食物を食べた後は口の中の違和感や体のかゆみなど、程度の差はあれ必ず不快な症状が現れる。それでも食べ続けなければならず、飽きっぽい子や落ち着きのない子は続けられないという。

「この治療を始めたいと思っているお母さんは、まず子どもの気持ちを想像してみてほしい」

 そうアドバイスするのは、心の問題に詳しい国立成育医療研究センターの大矢幸弘医師だ。

「親からずっと『絶対に食べてはいけない』と言われてきた食べ物を、いきなり『今日からは食べなさい』と言われた子どもは戸惑ってしまいます」

 除去していた期間が長ければ長いほど、その食べ物を怖いと感じ、嫌いになる子も多い。それを毎日、治療で薬のように食べさせられても苦痛なだけで続かない。

「無理強いしても治療がうまくいかないことは、これまでの臨床研究の経験から明らかです。まず子どもがその食べ物をどう思っているか、聞いてみてください。たとえば卵アレルギーで卵そのものは嫌だけれど、ケーキをずっと食べてみたかったという子には、ケーキから始めるなど、その子に合わせた細やかな対応が必要です」(大矢医師)

(ライター・谷わこ)

AERA  2016年3月7日号より抜粋

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