40カ国からの留学生数は20%程度に抑え、英語を学ぶ環境を心がける。留学生が多いのはドイツ、中国で、日本からは現在5人。学費は寮費も含め年間約5万3千ドルだが、5割近くが学校から学費の支援を受けている(撮影/ジャーナリスト・津山恵子)
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40カ国からの留学生数は20%程度に抑え、英語を学ぶ環境を心がける。留学生が多いのはドイツ、中国で、日本からは現在5人。学費は寮費も含め年間約5万3千ドルだが、5割近くが学校から学費の支援を受けている(撮影/ジャーナリスト・津山恵子)
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マーサーズバーグ・アカデミー(撮影/ジャーナリスト・津山恵子)
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マーサーズバーグ・アカデミー(撮影/ジャーナリスト・津山恵子)

 日本とは一味もふた味も違う、海外の学校。米国の「世界の縮図」とも言える学校では、日本人は自立した学習スタイルを確立。そこには親に「寄付をしたい」と言わしめる教育体制があった。

 創立121年のマーサーズバーグ・アカデミーは、米首都ワシントンから北西約145キロ、緑が豊かな農地に囲まれている。芝生の中に立つ図書館や寮は、筆者が過去に取材したスタンフォード大学、ハーバード大学といった名門校に匹敵する美しい施設で驚いた。

 9~12年生(日本の中3~高3)の4年制。米国でも知る人ぞ知る同校に、日本人が5人在学し、のびのびと学んでいる。

 清原里菜さん(16)は、大学レベルの化学の授業で、iPadにダウンロードした教科書を使って実験していた。所属クラブは水泳部だ。

「米国のほうが勉強は大変だけど、生徒がみな自立しています。先生と生徒の距離が近く、自分も最初の年に勉強が忙しくて水泳部の練習がきつかったとき、アドバイザーに話して、どうしても大変な時には勉強のために水泳を休んでもいいということになりました」

 山本祐菜さん(16)は、「海外の学校は、日本とは世界観が異なる」と感じ、留学前にインターナショナルスクールに2年間通い、米国で六つのボーディングスクールを見学した後、マーサーズバーグを選んだ。日本と異なり、選択科目を豊富に組み合わせ、同級生が同じ授業を受けるのではない、自立した面が決め手だったという。

 留学生を受け入れ、多様性がある「世界の縮図」のような環境を心がける。自治体などの支援は一切受けず、運営は学費と寄付金だけ。約6ヘクタールのキャンパスや施設の維持などに使うため、投資に充てる寄贈金による基金の額は2億ドルを超える。「教育の独立を守るための方針」だという。

「それだけの教育を我が子が受けたら、親としては寄付をしたいと思いますよ」と、2人の息子を通わせるニュージャージー州在住で資産運用会社オーナーの松田雅夫さん。

 松田さんによると、受験時には親子が別々に面接を受け、一日中授業や昼休みを見学するなど、生徒が寄宿生活や校風に向いているかどうか、丁寧な選考がある。入学後も、学科の教師、寮に住むアドバイザー、部活のコーチらから、成績や生活、進学について頻繁にメールで連絡がある。選択科目は、生徒のレベルや希望に合わせ、親も巻き込んで決める。ハーフで長男のモーガン君(17)は、学校が費用を負担し、夏休みに日本で英語を教え日本文化を学ぶ研修に参加し、高校生とは思えない経験をしている。

AERA  2014年11月17日号より抜粋