楠木新(くすのき・あらた)1954年、神戸市生まれ。生命保険会社勤務。自らの「こころの定年」の経験がきっかけで取材、執筆、講演活動を開始。近著に『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』(写真:本人提供)
楠木新(くすのき・あらた)
1954年、神戸市生まれ。生命保険会社勤務。自らの「こころの定年」の経験がきっかけで取材、執筆、講演活動を開始。近著に『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』(写真:本人提供)
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 働くうえで40歳というのは、ひとつの節目。「人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人」の著者である楠木新さんは、その節目で働く意味を見失う状態を「こころの定年」と表現し、次のように説明する。

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 サラリーマンの人生は、前半戦と後半戦に分かれます。前半戦では同僚や顧客に評価されて一人前になり、後半戦では自分の老いや死を受け入れながら働く。その境目の40歳あたりで働く意味を見失う状態を、私は「こころの定年」と呼んでいます。「誰の役に立っているのか」「成長している実感がない」「このまま時間が過ぎ去っていいのか」と感じる状態のこと。ライフステージが変化する女性よりも、人生は一直線だと思い込む男性が陥りがちです。

 いま40歳前後の世代は、バブル崩壊後に入社し、会社の業績も上がらず、将来のイメージが描きにくい。これまでの40歳よりも厳しい状況を生きています。その挫折を他人や時代のせいにするのではなく、いかに次のステップにつなげられるか。左遷やリストラだけでなく、病気、家族の問題など、40代はみんな何らかの事情を抱えているものです。人生の大きな苦難に直面したことで「働く意味」を考え直す人もいます。本当の勝負は中年以降。挫折に正面から向き合う覚悟が必要です。

AERA 2014年11月3日号より抜粋