実家の片づけは、実は親子関係を見直すきっかけになることもある。「断捨離」の生みの親、やましたひでこさんも、片づけを通じて母に「報復」していたことに気付いたという。

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 私の母(84)は典型的なモノを溜め込む人でした。私は散らかっている家がイヤで、結婚後も実家に帰っては、「不要なもの」を処分していました。

 母は不満を言い、よく衝突していました。関係が熾烈になったのは、母が入院してから。私は、ここぞとばかりモノを捨てたのです。古い傷んだ服、カビの生えた靴。どう見ても不用品ですよね。

 家はかなりきれいになりました。でも母は、「ひどいことをされた」と怒っていた。母が私の家の隣に越してきてからは、もう戦争です。母は病院に行く時も「捨てちゃダメだからね」と言い置いて出かける。お互いの間に反発心があり、私はどんどんしんどくなっていきました。

 そのしんどさの正体に気づいたのは3年後です。それまで私と母の関係は決して良好ではなく、私には、子どもの頃からずっと母に尊重されてこなかった、コントロールされてきたという思いがあった。無意識のうちに、片づけを通して母に報復していたんですね。「母のため」という大義名分はあっても、結局は「私のため」だったんです。

 母にとって大切なモノや心地よい環境は、私が思っているものとは違います。カビの生えた靴も、足が悪くなった母にとっては歩く象徴で、失いたくなかったのかもしれません。私と母は違う人間で、違う人生を生きているのですね。

 片づけには、人間関係が如実に表れます。片づけをめぐって親子関係がこじれるなら、その不全感は自分で作りだしているのかもしれません。

AERA 2014年10月20日号より抜粋