イベント開催時に、一定の条件のもとで住宅宿泊事業法や旅館業法の許可を得ずに、住民が「自宅での宿泊」を提供できる制度だ。プロ野球のキャンプや祭りなどで実績も多い。

 また、日本の宿泊施設は出張向けのビジネスホテルや、研修や家族旅行向けの4~5人部屋などのスタイルが多いことも最近のニーズと合わないとの指摘もある。

 福岡市は、昨秋のラグビー・ワールドカップ日本大会の開催都市であり、大分市など周辺の競技場での観戦客の宿泊需要もあった。

 地元の観光団体の関係者は、こう話す。

「観光客数と客室数の需給は十分に足りているはずだった。しかし、市内の宿泊施設は、国内出張を目当てにした、部屋が狭いビジネスホテルが圧倒的に多い。これに対し、欧米やオセアニアの観光客は長期滞在型やレジャー型の施設を好み、ニーズを十分にくみ取れなかった」

 一方、みずほ総研の需要側の試算では、日本経済の成長戦略の実現へ向けて期待が高まるインバウンド(訪日外国人観光客)需要の増加に陰りが見え始めていることもわかった。

 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が世界中を不安に陥れるなかで、「東京五輪に人が集まるのか」と大会の成功を不安視する声も出始めている。

 みずほ総研の試算では、20年のインバウンドの推計を3400万人(政府目標は4千万人)に下方修正している。この推計は、国際線の便数、クルーズ船寄港回数など供給側のデータを用いて行い、韓国人客の試算を別に行った。

 19年7月から日本の対韓国輸出管理の見直しが発動。「安全保障上の管理」を理由に、戦略物資のフッ化水素など半導体素材3品の韓国への輸出厳格化措置が取られたことをきっかけに、韓国人観光客数が大きく落ち込んでいるからだ。

 また、夏場の大災害が続いていることも、日本への観光を敬遠する材料になっている。18年は大阪北部地震や西日本豪雨、台風21号、北海道地震など夏場に自然災害が頻発。19年も大型の台風19号が関東や東北など広い範囲で洪水などの被害をもたらした。

次のページ