このため、日本を避けるように、韓国、台湾、香港といった東アジアの旅行客が東南アジアの割安なビーチリゾートへとシフトしているとの見方もある。こうした国・地域間の競争激化によるインバウンド成長の頭打ちも懸念されている。
そこに追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染拡大のリスクが浮上した。東京五輪の観光客減に拍車をかける懸念が強まっている。
大和総研は、新型コロナウイルスの影響が3カ月程度で終息する場合と、新型コロナウイルスの拡大が深刻化して流行が1年程度続く場合の二つのシナリオを設け、日本へのインバウンド現象や日本経済の成長率の下押しなどに関する影響の試算を公表した。
試算では、新型コロナウイルスの流行期間が3カ月の場合、訪日中国人観光客数は19年比100万人減少(10%減)すると想定。流行が1年程度続いた場合は、中国の団体旅行禁止令の実施期間も1年程度に延びると想定し、同400万人減少(40%減)するとした。
レポートでは、「新型コロナウイルスの流行が拡大・長期化すれば、東京五輪・パラリンピックに関連した国内消費への悪影響は避けられない」と指摘する。
具体的には、日本経済への影響度は、実質GDP(国内総生産)成長率で、少なくともマイナス1ポイント以上の下押し圧力がかかるとの試算だ。
大和総研は、20年の実質GDP成長率が0.4%と予想。流行期間が3カ月のシナリオで成長率は0.3%、1年間の場合はマイナス0.4%をさらに下回る可能性が大きいという。
みずほ総研の宮嶋氏も、こう話す。
「季節の繁閑についても気をつけておくべきで、夏場は中華圏旅行者の最繁忙期であり、もし、新型コロナウイルスが東京五輪前に終息しなければ、日本経済にとって大きな痛手になると思う」
(本誌・小島清利)
※週刊朝日 2020年2月28日号