2020年東京五輪・パラリンピックの際、都市部のホテルが不足するという懸念が解消し、逆に需要不足の可能性が強まっている。日韓摩擦の激化による韓国人観光客の激減に加え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による中国人観光客の激減リスクも拍車をかけている。
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五輪イヤーのホテル客室不足の懸念を払拭(ふっしょく)したのは、みずほ総合研究所が昨年11月末にまとめた「2020年東京五輪開催年のホテル需給の試算」だ。
この試算は、日本人と外国人のそれぞれの宿泊需要について、「上振れ」「下振れ」「標準」の3パターンを設けた。供給側は、18年時点の客室数に20年までの新規開設計画を反映した「標準シナリオ」と、既存施設の縮小なども加味した「下振れシナリオ」を設定。需要と供給それぞれの予測値を用いて不足客室数を算出している。
それによると、20年の不足客室数予測値の標準的なシナリオでは、どの地域においても、ホテル客室不足は発生しないとの試算になった。近年の調査では客室不足が発生しがちだった東京、大阪ですら、不足が発生しなくなった。
みずほ総研の宮嶋貴之主任エコノミストは、こう指摘する。
「この要因は、ホテル客室数の予測値が上振れしたためだ。18年に同様の試算をしたときに比べ、日本人の宿泊需要が上方修正されたが、供給側の拡大がそれを上回る予想になった」
例えば、羽田空港周辺では、住友不動産が4月に空港直結ホテルを、京浜急行電鉄も国際線ターミナル近くにホテルを開業する予定だ。このほか、プリンスホテルも7月、東京都江東区に新ホテルの開業を予定している。
しかし、五輪の花形種目であるマラソンと、競歩が、暑さ対策を理由に札幌市に開催場所が変更になったことは懸念要因として残る。同市の宿泊需要の最大の繁忙期は7~9月で、そもそも稼働率が90%を超えている。十分な宿泊施設の確保は大きな課題だ。
札幌市のように東京以外の競技開催地では、一時的な宿泊需要増大の受け皿として、「イベント民泊」が注目されている。