ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は1週間の出来事について。
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この一週間はいつになく出入(ではい)りが多かったので、今回は日記風に──。
一月二十四日、東京へ行き、大藪春彦賞の選考会に出席した。選考委員は大沢在昌、藤田宜永、黒川博行の三人だが、藤田さんは都合により書面参加した。
授賞作はあっさり決まった。『犬』・赤松利市。一回目の投票で大沢さんとわたしが推したから。
赤松さんは二〇一八年、『藻屑蟹』という作品で大藪春彦新人賞を受賞し、デビューした。“六十二歳 住所不定 無職”というキャッチフレーズのとおり、その後もネットカフェで執筆をつづけているという。受賞作『犬』は圧倒的な熱量とドライブ感、リアリティーがあり、作者が生きてきた軌跡が小説の糧になっている──と、大沢さんとも意見が一致した。
選考のあと、待機していた赤松さんや各社担当編集者が選考会場近くの店に集まって祝賀会。こういうとき、選考委員としては、自分が推した作品が受賞するとうれしい。八時半まで飲み、最終の新幹線で大阪に帰った。
二十五日昼、天満橋で彫刻家・西野康造の個展。西野は京都芸大彫刻科の二年後輩で、学生のころはよく麻雀をした。無重力をテーマにした彼のモニュメントは世界各地にあり、もっとも有名なものはニューヨーク、『4ワールドトレードセンター』のエントランスロビーに設置された直径三十メートルの『スカイメモリー』という作品だからスケールが大きい。
西野と美術館学芸員のトークイベントのあと、西野に挨拶(あいさつ)して帰宅。夜の九時まで“お昼寝”をしてから小説誌の原稿を書きはじめたが、また眠くなり、ちょっとひと休みと床に寝ころがったら、朝まで寝てしまった。
二十六日、日曜日は近所の爺(じい)さんたちとテニス。三時間も走りまわってへろへろになり、シャワーのあとは、いつものごとくお昼寝。よめはんに叩(たた)き起こされて蕎麦(そば)を食いに行き、帰ってからはまじめに仕事をした。原稿用紙にして五枚。わたしにしてはがんばった。