「お風呂やサウナで体調を崩して救急車で運ばれたり、亡くなったりするケースは毎年非常に多い」
小林教授は「安全な入り方」ができていないことが大きな原因だと指摘する。「間違った入浴法」には、大きく三つあるという。
一つ目は過度に熱いお風呂に入ること。
「熱いお湯につかることで、交感神経の働きが急激に上がってしまいます。熱めのお湯を好む人もいますが、『熱い』と刺激を感じるということは、その時点で交感神経が上がっているということ。血管が収縮し、血流が悪くなり自律神経のバランスが乱れてしまうということなんです」
自律神経は、呼吸や体温調節をはじめ内臓や血管などの働きを調整するもので、活動時に優位になり血管を収縮させるなどする交感神経と、睡眠時などに優位になり血管をゆるめたりする働きのある副交感神経からなる。交感神経と副交感神経のバランスがとれている状態が理想的だ。
そのような自律神経のバランスをとるための方法の一つが、入浴して血流をよくすること。推奨するお湯の温度は、体温に比較的近い39~41度だという。
「ちょっとぬるいかなと感じるくらいがおすすめです。血流をコントロールする自律神経のスイッチが入るような『心地よい』と感じられる温度を心掛けてください」
また、寒いからといって首までズッポリつかりっぱなしもおすすめしない。
「入浴によって、熱と水圧の作用で血流はよくなるのですが、首までつかると、水圧で心臓が圧迫され、逆に血流が悪くなってしまうことがあるんです」
首までの全身浴は1分ほど。全身が温まったら半身浴に切り替え10分程度温まるのがいいという。
「これで血流がよくなり、副交感神経も上がってくるんです。そうすることで深部体温も上がり、腸などの働きもよくなってきます」
二つ目に気をつけたいのは、浴室と脱衣所などの温度差がありすぎる場合などに血圧が急激に変化して起こる、いわゆる「ヒートショック」だ。血圧の変化で脳内出血や心筋梗塞(こうそく)などを引き起こすことがある。