いよいよ冬の寒さもピーク。あたたかいお風呂でリラックスしたいところだが、お風呂で亡くなる人は一年を通して真冬が圧倒的に多い。高齢者が大きな割合を占めていて、65歳以上では交通事故死を上回るという調査結果もある。お風呂死をしないために、専門家の意見を聞いてみた。
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東京都監察医務院が行った調査「東京都23区における入浴中の死亡者数の推移」によると、東京23区内で発生した入浴中の死亡者数は、年間約1400件。そのうち65歳以上が占める割合は、過去10年間の平均で男女合わせて85%を超える。時期別でみると例年12~2月の件数が多く、2018年はこの3カ月で700件超と、年の半数を上回っていた。
また、厚生労働省の人口動態調査に基づき消費者庁が作成したデータによれば、65歳以上の「不慮の溺死(できし)及び溺水」による18年の死亡者数は7088人。うち7割を超える5072人が浴槽内で死亡しており、近年は交通事故死よりも多い傾向が続いている。
入浴中の心肺停止の発生頻度などを調査したことがある多摩平の森の病院、高橋龍太郎院長はこう話す。
「知覚機能や代謝は年齢とともに落ちてきて、血圧の変動も年齢とともに大きくなります。高齢者は、お風呂場で血圧が急上昇したのちに急低下することで意識低下を招き、お湯におぼれて亡くなる危険性が高いのです」
高橋院長は家の環境も危険を招く要因だという。
「住環境も進化し、家庭の断熱性も高まってきていますから、長い目で見れば少しずつ改善されていくと思いますが、現時点では80歳前後の高齢者は昔と同じ断熱性の低い一戸建てに住まわれている方も多い。また、浴室は北側にあることが多いことなどもあります。浴室や脱衣所が寒い環境で入浴すると、老化した身体機能がリスクを高めることにつながります」
健康のために入浴をすすめる『医者が教える小林式お風呂健康法』(ダイヤモンド社)の著者、順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、こう警鐘を鳴らす。