入浴前に浴室全体にお湯のシャワーをかけたり、お風呂のふたをあらかじめ開けておいたり、浴室暖房機がある場合にはそれを使用したりするなど、脱衣所ばかりでなく浴室そのものの温度にも注意が必要だ。
三つ目に危ないのが、お酒を飲んだ状態で入浴し、脱水状態になるケースだ。
「アルコールを分解するためには水分が必要ですから、そのためにどうしても脱水ぎみになってしまうんです。さらに、お風呂に入った心地よさでスーッと眠気を招いてしまうことがあり危険です。汗をかいてアルコールを抜こう、という入浴もひかえたほうがいいです」
お酒をたくさん飲んだら入浴しないことが肝心だ。
「長湯をするのが好きだという方は、ペットボトルを持って入って脱水を防ぐようにするといいですね」
また、シャワーを浴びることだけで済ませる場合についてはどうだろうか。
「交感神経が上がり目を覚ますという意味では、朝起きたときにシャワーを浴びるのは効果的だと思います。だけど夜は、やはりリラックスして副交感神経も上げたいですし、そのあとの睡眠のことも考えると、やっぱり湯船につかり、深部体温も上げたほうがいいですね」
どうしても忙しく、夜にシャワーのみでというときには、シャワーヘッドをなるべく近づけ、とくに首の付け根や首の後ろを温めるようにすることで、副交感神経を高められるという。シャワーを浴びたあとも、首を冷やさないよう心掛けることが大切だ。
入浴をさらに効果的なものにするために、入浴中で血流のいい状態で行う簡単な“バス・ストレッチ”を、小林教授は同書で提案している。
「座る時間が長く運動をあまりしない生活の方も多い時代ですし、最近はスマホによって猫背ぎみになって、いっそう血流が悪くなっていることもあります。身体を伸ばすことで血管や神経も伸びます。伸ばしてあげることが身体の健康の基本ですからね」
お風呂での体調管理を提唱する小林教授は、入浴は気持ちの面にも大きな効果があると語る。
「お風呂に入ると、やっぱり気持ちがスッキリします。その日の雑念や邪念を洗い流すこともできるのがお風呂で、これは、日本の大切な文化だと思います。たかがお風呂、されどお風呂。気持ちが身体の健康に及ぼす効果はとても高いと思います」
全国的に暖冬と言われているが、こんな冬こそ寒さに対する備えが重要になる。お風呂で命を落としてしまわないためにも、正しい入浴法を実践したい。(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2020年2月7日号