「若い人をターゲットにしても、彼・彼女たちは外でモノを買わなくなっています。買っても雑貨が中心で単価が上がらない。若い夫婦は共働きだから、昼間に来てくれません。一方、大人世代、特に大人女子は子育てを終えて、『ママ友付き合い』から解放されてのびのびしています。もう子供の塾の情報を仕入れるために、嫌な人と付き合わずに済む。本当に仲のいい友達と同窓会感覚で付き合える。そんな自発的に群れる喜びを感じていて、昼間にグループで来てくれるんです」
渋谷ヒカリエの飲食フロアなどでは今も数多くの大人女子を見かけるが、さらに多くが渋谷を目指すようになるのか。
先の三浦さんは、「母娘消費」ならぬ、昔なら考えられなかった「父息子消費」が今、生まれつつあるという。
「セレクトショップで息子を連れた40、50代の父親をよく見かけるようになりました。今の子はユニクロで十分なのですが、親としては少しいいものを買ってあげたくなるものです。今のお父さんは若いころに『ポパイ』や『ブルータス』を読んでいて、商品知識や洋服についての蘊蓄(うんちく)がある人が多い。息子に洋服を選んであげられるのです」
若者向けの店や大人世代向けの店で、少し高めのものを父が息子に選び、買ってあげる──そんな光景が再開発ビルで見られるようになるのかもしれない。
「でも、それって渋谷っぽいですよね。父息子ではありませんが、東急本店はそういう母娘消費が以前から行われているところですから」(三浦さん)
大人世代の動向に詳しい未来ビジョン研究所の阪本節郎所長によると、「若者を含めた新しい大人の街」に渋谷はなる可能性があるとのことだ。
「実は今、若者と大人の境目がわかりにくくなってきているんです。今の40、50代が若者気分を残したまま年を重ねているからです。40代は特にそうで、ももいろクローバーZが典型ですが、20代が好むものを40代も一緒におもしろがっています。ヒカリエに大人女子が集まったときは新しい大人の街になると思っていましたが、若者気分の大人世代が渋谷に来るようになると、若者と大人が融合する新しい街になる可能性がありますね」
果たして渋谷はどうなっていくのか。駅周辺の再開発は2027年まで続く。「若者」だけでない渋谷の姿を想像しつつ、新しくできた商業施設をのぞいてみるのも悪くない。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2019年12月6日号より抜粋