“若者の街”渋谷に変化が起きている。11月に「渋谷スクランブルスクエア」「東急プラザ渋谷」、そして12月には「渋谷PARCO」と三つの新施設が誕生した。前者の二つの施設がターゲットにするのは「大人」。渋谷PARCOも若者にターゲットを絞っていない。思惑どおり大人を集められるのか?
渋谷周辺を一体的にとらえて、「地元」を見直そうという流れもありそうだ。渋谷スクランブルスクエアの堀内謙介商業・展望Dept.総支配人が、
「東急百貨店本店の先には『松濤』があり、その奥には『代々木上原』もあります。一方、フクラスの先には故・三木武夫元首相が住んでいた『南平台』がある。渋谷の繁華街は若者が多いが、その周りに古き良き住宅街がいっぱいある。そういう足元のお客さんをもっと大事にするべきではないかと考えています」
と言えば、東急プラザ渋谷の長尾康宏総支配人もこう話す。
「以前と同じでバスターミナルに接しています。田園都市線や東横線沿線にお住まいの方はバスで渋谷に来られる方も多く、そんなお客さまにもご利用いただきたいと思っています」
古き良き住宅街の住人には、富裕層や社会的に地位の高い人が多い。当然、シニアを含めた大人だ。
誕生した新ビルを見ようと遠くから訪れる客や、なお増える外国人観光客に地元の大人が加われば盤石だが、果たして商業施設側の思惑は当たるのか。
東急プラザ渋谷が「40代から60代を主力ターゲット」とすることは先述した。世代・トレンド評論家の牛窪恵さんによると、実は大型商業施設がここまで高い年代層を主力にすえるのは極めて珍しいという。
「これまでは大人世代が本当のねらい目でも、『若い女性が来てくれたほうが華やぐ』などの理由で、表向きにはターゲットを低くする例がほとんどでした」
東急プラザ渋谷の長尾総支配人は、
「三つの商業ビルができる中で、渋谷に欠けていることを考えるうちに、その世代向けのお店づくりに行きつきました」
とするが、牛窪さんは商業施設がいよいよその世代を主力に狙わざるを得なくなっていることの表れではないかと読む。