ドラァグクイーン、医大生、バーテンダー、逃亡者……と、ここ数年で役の幅をぐんと広げている人気俳優、三浦春馬さん。次なる映画で演じるのは、“平凡なサラリーマン”。映画の撮影秘話、演技にかける思いに作家の林真理子さんが迫ります。
* * *
林:私、三浦さんが主演を務められた舞台「キンキーブーツ」、2回も見ちゃいました。初演(2016年)と再演(19年4~5月)と。
三浦:ほんとですか。ありがとうございます。
林:あまりのすごさにびっくりしました。トニー賞とかいろんな賞をとったブロードウェーミュージカルの日本版で、私、ブロードウェーにも行って見たんですけど、それに負けない迫力でしたよ。
三浦:すごくうれしいです。
林:連日満員御礼でチケットもとれず、みんなスタンディングオベーションで、すごい盛り上がりでした。
三浦:うれしいですよね。
林:「三浦さんってこんなに歌も踊りもできるんだ」って多くの人が認識したと思うんです。ドラァグクイーンという、女装してパフォーマンスする男の人の役ですけど、プライベートでもずっと舞台と同じ10センチのピンヒールブーツをはいてたんですって?
三浦:はい、公演の期間中は。
林:あのとき、すごい筋肉でしたよね。特に二の腕なんか。あの筋肉は、まだ残ってますか。
三浦:体重が落ちたので、厚みはなくなりましたね。
林:その「キンキーブーツ」のあと、今度の映画(「アイネクライネナハトムジーク」9月20日全国公開)では、ごくふつうの青年の役をやって、同じ人とは思えなかったですよ。
三浦:アハハハ、キャラクターがぜんぜん違いますからね。
林:この映画は、プログラムを読むと、伊坂幸太郎さんが斉藤和義さん(シンガー・ソングライター)と組んで書いた「アイネクライネ」という短編をはじめとする6編の短編連作集が原作なんだそうですね。
三浦:はい、そうなんです。
林:三浦さんは伊坂さんの本をよく読んでたんですか。
三浦:よくは読んでなかったんですけど、伊坂さんの作品には今回2回目の出演なんです。『チルドレン』という小説をWOWOWがドラマ化したときと、今回と。
林:三浦さんが演じる主人公の「佐藤君」って、ほんとにどこにでもいそうな青年ですよね。今、多くの人が「出会いがない」って言いますけど、佐藤君も「出会いがない」と言って、かといって誰かがお膳立てしてくれたり、人に紹介してもらうのもイヤなんですね。どこかで出会いたいという。