三浦:そうですね。できれば劇的な出会いをということを、どこかで望んでいるのだとは思いますね。
林:佐藤君は上司に押しつけられて街頭でアンケートをとるんだけど、誰も足をとめてくれなくて、ただ一人「紗季ちゃん」(多部未華子)だけがアンケートに答えてくれて、そこから物語が始まるんですね。
三浦:はい。そのあと偶然再会して。
林:もう会えないと思っていた紗季ちゃんと偶然出会って、車から飛び出して走って追いかけていくシーン、感動的ですよね。女の子だったら夢見るシーンですよ。
三浦:ほんとですか。アハハハ。
林:三浦さんみたいな人にあんなふうに追いかけられたいって、みんな思うんじゃないですか。
三浦:ドラマチックなシチュエーションですよね。女の子にしてみれば、ああいう場面で再会するって、ちょっと気恥ずかしいのかもしれないですけど、そのシチュエーションにクラッとすることってけっこうあるだろうなという設定でしたね。
林:ハート、キュンですよね。だからすぐ結婚するんだとばっかり思っていました。
三浦 ほんとですね。あんな劇的な再会があったのに。
林:住所とか電話番号とか聞くのかと思ったら、佐藤君ってすごくマジメなんですよね。
三浦:そうなんですね。もう少し話をしたかったのに、「でも、勤務中だから」と思って、きっとその一歩が出なかったんでしょうね。
林:私、不思議だったのは、紗季ちゃんとは結局そのあと10年間も同棲するんだけど、10年のあいだになんで結婚に至らなかったのかなと思って。
三浦:何でしょうねえ。危機感もなかったのかな。
林:紗季ちゃんだって、出会ったときが23、24歳だとすると、10年といったら33、34歳ですよね。そろそろ子どもだって欲しいだろうし、親からもせっつかれるだろうし。
三浦:そうですよね。同棲している10年間はポッカリ抜けていて、いきなり10年後という設定ですから、その10年間、佐藤と紗季は何をしていたのか……。
林:その10年間は見てる人の想像にまかせるということなんですかね。
三浦:うーん、どうだったんでしょうね。監督はどういう思惑だったのか、僕自身も監督に聞きたいぐらいです。
林:10年間の空白のあと、バスに乗っている紗季ちゃんを偶然見かけて、一生懸命バスを追いかけるでしょ。やっと追いついて、彼女も佐藤君を見てなつかしそうな表情をしますけど、佐藤君は、自分の思いを伝えて、そのままバスを見送ってニッコリ笑うじゃないですか。やっと戻ってきてくれたんだから、あそこでなんでバスに一緒に乗らなかったのか、なんで彼女をグッと抱きしめなかったのか、あのシーンもよくわからないんです。