日本私立学校振興・共済事業団の調べでは、3大都市圏の私立大学入学定員充足率は、14年度の約106%から18年度は約103%に減少した。一方、その他の地域は同約96%から約101%に増加。定員割れになっていた地方私立大学は、学生数が増える結果となった。
この4年間で、入学定員の絞り込みはほぼ一段落したと思われる。しかしながら、18年の都市圏の私立大学での厳しい入試状況が広く報道されたため、合格を勝ち取るために19年も併願校を増やす受験生が増加。それによって私立大学全体の受験者数が急増したと考えられる。その一方で前述したように私立大学の合格者数は増加に転じたことから、合格倍率は微増という結果になったのである。
二期の合格者数が前年比大幅増となったのも、一期では定員を超過しないよう合格者数をある程度抑えておき、二期で調整した結果といわれる。受験生も大学も、「入学定員管理の厳格化」の呪縛に振り回されてきたと言えるだろう。
入学定員管理の厳格化が進むにつれて、受験生の安全志向がますます強まっていると渡邉さんは指摘する。
厳格化が始まって2年目の17年入試では、MARCH、早慶上理の上位私大がそろって難化。翌18年になると、産近甲龍(京都産業・近畿・甲南・龍谷)、日東駒専(日本・東洋・駒澤・専修)の中堅私大に受験生が集中するようになってきたというのである。
「この傾向にますます拍車がかかり、安全のために2ランク下の大学まで受験する傾向が強くなったというのが19年入試の際立った特徴です。それによって、大東亜帝国や、関西では摂神追桃の難易度が急上昇。ちなみに偏差値45~50の受験生が、摂神追桃に合格した割合を調べてみると、文系の一般方式で18年の46%に対して、19年は25%と大幅に減少しています」(渡邉さん)
(ライター・笠木恵司)
※週刊朝日 2019年8月9日号より抜粋