【兵庫】
東大合格者数が何度も日本一になったこともある名門進学校の灘は1学年の人数が約220人と少ないにもかかわらず、2015年以降、毎年東大に90人以上合格していた。
ところが、19年は74人。合格者数が減った理由は、東大を受験する生徒が減ったからだ。同校の和田孫博校長が19年卒業の高3生についてこう話す。
「文系が29人、理系が190人です。現役の東大受験生が昨年より20人近く減り、浪人生も10人近く少なかったので、東大の合格率は例年並みと言えると思います。あくまでも推測ですが、文系が少ないのは、従来本校の生徒が目指した法曹界や国家公務員の仕事に魅力を感じられなくなっていることが一因かもしれません」
関西圏は医学部人気が特に高いこともあり、理系のほぼ半数が国公立大医学部に出願。最難関の東大理IIIに20人、京大医学部に26人が合格した。東大理III合格者数2位の開成と筑波大附駒場が各10人、京大医学部合格者数2位の洛南が11人なので、2倍以上の合格者数だ。
「京大の理工系や文科系は例年どおりでしたが、医学部志望が例年以上に多かったですね。学校としては医学部にたくさん合格することを手放しで喜んでいるわけではなく、多方面で活躍する人材を育てたいと思っています」(和田校長)
京大の合格者数が灘を1人上回るのが、甲陽学院だ。進学資料室長の杉山恭史教諭が19年の入試を振り返る。
「文系が48人、理系が158人で、進学志望先は理系は工学系61人、医学部59人、理学系15人でした。成績上位層を中心に、『京大よりも東大』という生徒が増えてきた気がします。東大の理類を受験した現役生は19人中17人が合格と高い合格率だったのは、数学と理科の難化が有利に働いたとみています」
ともに設立者が酒造家で、距離的にも近く、自由な校風の両校は、互いに認め合う。甲陽学院の今西昭校長はこうたたえる。
「大学合格力において灘が抜きんでていることは明らかです。生徒にも先生にも最大限の自由が与えられるという校風を守りつつ、この偉業。日本一の学校やと思っています」
灘の和田校長も、甲陽学院とは校長同士、教員同士だけではなく、同窓会や事務局も交流があるという。
「ライバル校というよりは同じ方向を向いて互いに頑張っていこうという同志のような学校です」