村上さんは日常的に祈りの実践をしている高野山真言宗僧侶の遺伝子発現のオン・オフを検討しました。その結果、僧侶の体で遺伝子発現がオンになっているのはI型インターフェロン関連遺伝子だったというのです。I型インターフェロンはウイルスから体を守っているタンパク質です。僧侶の祈りの実践が、免疫力を高める遺伝子のスイッチを入れていると推測されるというわけです。

 祈りが免疫力を高めるのだとしたら、認知症の予防にもつながるのは、間違いないところでしょう。

 ここで大事になるのは、どんな祈りをするかです。ドッシー博士は神に何かを依頼するというような祈りは本当の祈りではないといいます。

 必ずしも宗教的な祈りではなくてもいいのです。「いわば『至高の存在』に対して波長を合わせ、身をゆだねるような感覚」を持つ。それをドッシー博士は「祈りに満ちた心」だといいます。

 自分の現世利益のためではなく、家族、仲間、周りの人、社会全体のために、「祈りに満ちた心」を持つ。それが大事なのではないでしょうか。

週刊朝日  2018年11月16日号

著者プロフィールを見る
帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

帯津良一の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選