村上さんは日常的に祈りの実践をしている高野山真言宗僧侶の遺伝子発現のオン・オフを検討しました。その結果、僧侶の体で遺伝子発現がオンになっているのはI型インターフェロン関連遺伝子だったというのです。I型インターフェロンはウイルスから体を守っているタンパク質です。僧侶の祈りの実践が、免疫力を高める遺伝子のスイッチを入れていると推測されるというわけです。
祈りが免疫力を高めるのだとしたら、認知症の予防にもつながるのは、間違いないところでしょう。
ここで大事になるのは、どんな祈りをするかです。ドッシー博士は神に何かを依頼するというような祈りは本当の祈りではないといいます。
必ずしも宗教的な祈りではなくてもいいのです。「いわば『至高の存在』に対して波長を合わせ、身をゆだねるような感覚」を持つ。それをドッシー博士は「祈りに満ちた心」だといいます。
自分の現世利益のためではなく、家族、仲間、周りの人、社会全体のために、「祈りに満ちた心」を持つ。それが大事なのではないでしょうか。
※週刊朝日 2018年11月16日号