「50代の女性社員が抵抗なく使っています。『女子会しようよ』と、よく声をかけられます」
と言えば、茶道をたしなむ50歳代の女性も、
「私が習っているお教室は、私が最若手で上は90歳を超える方までいらっしゃるのですが、皆さん、お茶を飲みに行ったりするときは『女子会へ行きましょう』と言っています」
と話す。
そうした現状を受けて、メディアも年配女性に対して「女子」を多用するようになっている。NHKが「定年女子」というテレビドラマを放映したのが昨年だし、ついこの間、同じNHKの朝の番組で高齢者の女性たちを「シニア女子」と呼んでいるのを聞いた。
実は、この「シニア女子」という言い方に記者が違和感を覚えたのが、この記事の取材を始めるきっかけになった。もともとは学校用語である「女子」が高齢者に使われることが不思議に思えたのだ。しかも、ネットで検索すると、折に触れて「何歳まで女子なのか」というテーマが論じられていた。対象年齢の拡大に、一定の疑問の声があることの証左である。
もっとも、言葉の使い方として間違っているわけでは全然ない。広辞苑で「女子」をひくと、「(1)おんなのこ。娘。(2)おんな。女性。婦人」となっており、年若い女性の意味が(1)に挙げられているものの、女性全般に使える言葉であることがわかる。
ただし、『日本人も悩む日本語』(朝日新書)の著書もある北海道大学大学院の加藤重広教授によると、「女子」は日本語としては新しいものだという。
「男子は『なんし』と読ませて、『一人前の男』という意味で平安後期から使われていました。でも、これと対での女子という言葉はありませんでした。女子が使われるようになったのは幕末か明治初期ごろから。法的に男と女を分ける必要に迫られたため、使われるようになったと思われます。印刷物としては、明治6年の小学校の読本に出てくるのがおそらく初出です」
以後、学校で男女を区別する意味で「男子」「女子」が使われてきたのは、ご承知のとおりである。