成人女性に対して「女子」が使われるようになるのは、1990年代後半ごろからのようだ。

 長年、女性ファッション誌を研究し、『「女子」の誕生』(勁草書房)の著書もある甲南女子大学の米澤泉准教授によると、ファッション誌の見出しに登場したのは99年に宝島社の雑誌「sweet」が「28歳、一生“女の子”宣言!」を掲げて創刊したのが始まりという。

「大人の女であるはずの成人女性たちが、自分たちのことを自然発生的に『女の子』と呼び始めていたのでしょう。事実、『sweet』は女性たちの支持を得て数年でナンバーワンファッション雑誌に成長していきます」

「女子」をメディア上で広めたのは、人気漫画家の安野モヨコさんだったと言われている。同じく90年代末ごろから化粧情報誌の連載エッセーで、盛んに「女子」を登場させたのだ。

 また、このころのキャリア女性たちは、「女子」という言葉に「男女平等」のメッセージを込めていた。  

「働く女性」向けの企画に力を入れていた週刊誌「AERA」が「女子」を大々的に取り上げたのは、2002年6月の「30すぎても『女子』な私たち──学校時代の対等な感じで男社会に自然に立ちたい」が最初とされる。この記事を書いた元同誌編集長で、現在、BUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長の浜田敬子さんは、こう言う。  

「知り合いのスタイリストが『ウチら女子』と言っているのを聞いて、『へえー』と思ったのが最初です。でも、自分で使いだすと、新鮮で便利な言葉でした。それまでは『女性』か『女』しか言い方がなくて、どちらも居心地が悪かった。なぜ女子がいいかというと、学校では性を区別する意味だけで使われていたので、男性に対して対等感があるんですね。その対等だった思い出を大事にしたいと思って、多用するようになりました」
 
 先の米澤准教授によると、その後の「女子」はひたすら拡大の歴史をたどる。  

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