13年4月に施行された改正労働契約法によって、非正規労働者が同じ会社で通算5年以上働いた場合、有期雇用を無期雇用に転換できることになった。労働者本人が無期雇用を希望すれば、企業側は拒めない。
「ところが、法改正から5年が経過する前にクビを切ってしまおうと、昨年秋ごろから今年3月までに大量の雇い止めが発生したのです」(関根氏)
東京都新宿区在住の渡辺照子さん(59)も、その一人だ。シングルマザーとして、2人の子どもを育ててきた。01年に都内のコンサルタント会社に派遣され、3カ月ごとの契約をくり返し更新し、同じ勤務先で17年間にわたって働いてきた。しかし、会社から契約を更新しないことを告げられ、昨年12月末で雇い止めになった。渡辺さんはこう話す。
「正社員とほぼ同じ仕事をしながら、時給は17年間で80円しか上がりませんでした。私を含め5人の女性が雇い止めに遭いましたが、総務部長は『派遣は何年勤務しようが、そんなことは関係ない』と言うのです。復職させないのなら退職金を支払うよう求めていますが、会社側は話し合いに応じようとしません」
渡辺さんは大学生のころ、学生運動にのめり込む。成田闘争などに参加していた大学2年のとき、12歳年上の自称「活動家」の男性と会い、1男1女をもうける。だが、長男が3歳のときに夫は失踪。活動家というのもウソだった。渡辺さんは子育てしながら、がむしゃらに働いた。保育園の給食調理員、生命保険の営業、輸入酒の委託販売などを担ったが、過労で倒れて入院した。うつ病を患い、1年ほど働けなかった。回復後、再び生保の営業やコールセンター勤務を経て、派遣の仕事に就いた。渡辺さんが語気を強めて語る。
「人よりも何倍も働いてきたのに、それが報われない社会になっています。シングルで非正規、シニア世代になれば貧困になるしかない。私たちには老後がありません。不安定なまま、終生働き続けなければならないのです」