「夫も、好きで定年になって家にいるのではなく、働きたいのに働けないという気持ちだってある。また、“これまで必死で働いてきたんだから、少しはゆっくりさせてくれ”という気持ちだってあって当然です」(岡野さん)
夫が何も考えてなさそうに見えたとしても、内心は複雑な感情を抱えているもの。妻にねぎらってほしいと思っているのだ。
「そんなときに妻が一方的に不満をぶつけたり、感情的になったりするのは禁物。そもそも、何でも完璧にできるような優秀な人なら、あなたの旦那になってない(笑)。まずはお互いに、相手の気持ちを理解しようとする努力が大事です」(岡野さん)
夫婦の不協和音の原因は、できない夫ばかりにあるわけではないという。妻の言動にも原因があるのだ。
「自分では気付かないうちに、夫をダメにする接し方をしてしまう妻の例は、本当に多いんです」
年間400件近い相談を受けている夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんは言う。夫をダメにする接し方とは、「(動いてくれない)あなたが悪いんだから」と感情的になって責めること。「何で手伝ってくれないの」「ちょっとは動いてよ」と、妻がついこぼしてしまいがちなセリフも、NGワードだ。
「まず取り組むべきは、話し方を変えること。ポイントは、主体を“あなた(You)”から、“私(I)”にすることです。これを心がけるだけで、夫の態度は全く違ってくるはず」(高草木さん)
例えば、「あなたは何もやってくれない」ではなく、「私はあなたに~してもらえたら、とてもありがたい、助かる」と伝える。帰りが遅い夫には、「こんな時間までどこで飲んでたの」ではなく、「早く帰ってきてくれたら、こんなにうれしい、助かる」ということを伝える。あくまで主体は、夫でなく、自分(妻)。その行動によって、妻がどうなるという利益を伝えること。これによって、目的意識を持たせることが大事だ。
「主体をYouにして怒鳴ったりすると、夫は頭ごなしに責められているような感覚になり、反論が返ってくる確率が高い。ですが、主体をIにするとメッセージが受け入れられやすく、即効性があります。だまされたと思って、試してみて」(高草木さん)
夫への接し方の基本は「調子に乗らせること」。男は単純なのだ。