鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍
若い世代の人たちは本当に熱くないのか?(※写真はイメージ)若い世代の人たちは本当に熱くないのか?(※写真はイメージ)
 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』新連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「20代とのギャップ」をテーマに送る。

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 若い世代の人たちは草食系が多いとか、熱くないとか言われますが、本当にそうなんでしょうか?

 昨年、僕の一番近くにいたスタッフが逃げていきました。20代中盤。4年ほど一緒にいたんですが、理由は「しんどかった」らしい。しかも僕が怖かったと。

 そして、先日。1年半ほど一緒にとある仕事をやっていた20代のチームが離れていきました。その仕事で僕が思うような結果が出なかった。正直言うと、僕が求めていたようなチームにはならなかった。その子たちから聞く話や情報で学ぶことは本当に多かった。だけど、「成功するためには死ぬ気で頑張る」という言葉の「死ぬ気」には互いに大きなズレがあったようです。そもそも「死ぬ気で」なんて言ってることがナンセンスなんでしょうね。

 そんなこともあり、20代の若者と仕事をしていく難しさを痛感しました。

 やはり、育ってきた環境が大きく違うから、考え方がそもそも違うんだなと。

 この1カ月、少し落ち込んでいたんですが、そんな中、とある人から声をかけられて、「サイゲームス」さんの社員総会に呼んでいただきました。「グランブルーファンタジー」などの大ヒットゲームを作っている、ノリにノっている会社です。都内のある場所で行われた総会には、2千人を超える社員が集まっています。若い。とにかく若い。若者たちがこんなにいるのか!ってくらい若い人が多い会社。おじさんが少ない。

 
 そこで、この半期での活躍をたたえていく。クリエーターや、マネジャー、裏で支えている人たち。目の前の巨大なスクリーンで、表彰される人が次々発表されていく。まず、その人が所属しているチーム名が発表された後に、名前が呼ばれる。社長の口からチーム名が発表されると、そのチームから「うわーー!」と声が上がり、名前が発表されると歓喜の声が上がる。名前が呼ばれた人は2千人の前でステージに上がり、話すのだ。スピーチしながら目が潤む人も少なくなかったし、仲間が表彰されることをみんな喜んでいる。

 正直、僕はそこにいた人を誰一人知らないのに、なんだか熱い気持ちになり泣きそうになった。

 僕は常々、「青春は大事だ」と言っている。映画を作るときも舞台をやるときも、必ず「この期間、年齢関係なく青春しましょう」と言う。みんなが一つのことに向かって青春できるものは成功すると信じている。

 そこで、ふと思う。20代が草食? 熱くない? そんなことない。そこに集まっていた若者たちはみな熱く全力で走っている。青春しているじゃないか。

 なぜ、ここにいる若者たちは熱いのか? 全力なのか? それは上に立つ人間がそういう組織作りをしているからだ。若者が目標を持ち、全力になるしかない編成、仕掛けをしているからだ。組織やチームの作り方で、こんなにも目の輝きが違う。だから思った。世代のせいにしてはいけないのだ。世代を疑う前に自分の組織作りを疑え。僕から離れていった20代の若者スタッフたちよ。ごめん。おじさん、これから青春できるステージを作れる大人になります。

週刊朝日 2018年5月4-11日合併号