「進学指導特色校に指定され学区制もなくなり、北野と天王寺に府内の優秀な生徒が集まっている。その分、生徒を奪われるほかの公立高は厳しい。大阪府の公立高全体で見ると、京大や阪大への合格者は伸び悩んでいる」

 5位は栄光学園(神奈川)の62.4%。東大が77人(44.5%)で、一橋大や東工大、北海道大にも複数合格している。卒業生数が173人と少なめで、合格率が高まった。

 トップ5以降を見ると、東京の開成(8位)や麻布(13位)、桜蔭(25位)など、東大に多数合格する中高一貫校が目立つ。東大寺学園(奈良・6位)や大阪星光学院(大阪・16位)は京大の合格率でリードしている。

 こうした有名私立に負けずに存在感を発揮しているのが、地方のトップ公立だ。

 9位の仙台第二(宮城)は東大と京大の合格者は28人だが、地元の東北大は約100人と全国最多。

 10位の札幌南(北海道)は旧制一中で、こちらも東大と京大は17人だが北海道大は約100人。12位の札幌北(同)は、北海道大に全国最多の122人が合格している。40位の札幌西(同)は北海道大が67人だ。

 15位の修猷館(福岡)はかつての藩校の伝統高で、九大の合格者が129人と全国トップ。福岡では修猷館に加え、筑紫丘(41位)と福岡(50位)が「公立御三家」と呼ばれる。

 駿台教育研究所の石原氏は、公立の優秀な生徒が地元の旧帝大を目指すようになっていると分析する。

「旧帝大を卒業すれば、電力会社や建設会社といった地元の有力企業に就職しやすい。九州の人にとっては九大のイメージは東大に劣っていない。浪人を避ける安全志向もあって、東大や京大よりも地元の旧帝大を選ぶ生徒が増えている」

 24位の旭丘(愛知)は名古屋市内にある名門校で、名古屋大はもちろん東大や京大、北海道大や東北大など県外の難関大に多数合格している。愛知の公立では明和(27位)や岡崎(30位)、刈谷(43位)や一宮(45位)、時習館(47位)が名古屋大の合格実績をてこに、トップ50入りした。

 大学通信の安田賢治常務は、経済的な理由もあって公立が復活していると言う。

「家計に余裕がないため、私立より学費が安い公立高校に行く生徒が目立つ。地元の大学に進めば、学費だけでなく生活費も抑えられる。優秀な生徒でも、東京に行かず地元にとどまる傾向がある」

 東大や京大よりも地元の国公立大医学部を選ぶ生徒もいて、地元志向の流れは今後も強まりそうだ。東大や京大の合格者数だけでは、高校の実力は見えにくくなっている。今週号では全国3374高校について、主要大学の合格者数を紹介している。トップ50のランキングとともに、実力を知る参考にしてほしい。(本誌・吉崎洋夫、多田敏男)

週刊朝日 2018年4月20日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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