
潮田登久子(うしおだ・とくこ)(右)/1940年、東京都生まれ。63年、桑沢デザイン研究所卒業。66年から78年まで桑沢デザイン研究所および東京造形大学の講師を務める。75年ごろから写真家として活動。冷蔵庫を正面から撮った『冷蔵庫 ICE BOX』、『みすず書房旧社屋』、書籍をオブジェとして撮った「BIBLIOTHECA/本の景色」シリーズ、夫との共著で、中国の一般庶民の生活や雑貨などを撮ったシリーズなどがある。
写真家で作家の夫・島尾伸三と8歳上の写真家の妻・潮田登久子。やりたくないことは一切やらず、怒られることを極端に嫌がる夫に、妻が腹を立てるときもあるが、日常の些細な出来事を笑い合える相性の良さは、出会いから40年たつ今も変わらない。
※「妻の父に騙されて結婚? 写真家・島尾伸三の家族観」」よりつづく
* * *
妻:島尾はやりたいことしかやらないんです。私がどんなに忙しくても平然として動かないし、手伝うことがあっても気が向いたときだけ。頭にくることはいっぱいあります。一緒に暮らしてると面白いから、私にとってはめっけもんの人生ですけど。
夫:指図されるのも大嫌い。
妻:私だけカッカしながら、掃除して、料理して、犬猫のごはんもあげて、写真もやってという生活なので、たまに文句のひとつも言いたくなります。料理も絶対にしないものね。子どものころにやりすぎたから。
夫:小学1年生の3学期から家族のごはんをつくってましたから。朝7時に起きて焼きたてのパンを買ってきて、妹と一緒に食べてから学校に行ってました。両親はいつ起きてたか知りません。学校から帰ると、かまどでごはんを炊くんです。1時間ぐらい火の番をしながら。でも母は、「今日はちょっと硬いわね」とか言うんです。父も同じ。
妻:「しょうがないよ」とか言い返さないのよね。
夫:だから大人になって自分でつくるのが嫌になっちゃった。
――「お酒で失敗したことは数え切れない」夫は今も変わらず。警官も医者も見放すほど酒癖は悪いが、それでも妻は支えている。
夫:浮気はしまくったけど、私が捨てられることはなかった。
妻:帰ってこないことはしょっちゅうあります。島尾は携帯電話なんて持たないから連絡しようがないですし。今でも時々ふらっと出かけてどこかで飲んで、帰ってくるのが面倒くさくなると、健康ランドみたいなところで一晩過ごしたりして。
夫:昔は駅のベンチで寝ることができたけど、今は締め出されるから。
妻:お酒で失敗したことは数え切れないよね。今年の5月も、三軒茶屋の交番から「ご主人が動けなくなって病院に連れていくので来てください」って夜中に電話がきて。慌てて迎えに行ったら、酔っ払って駅のトイレに座ってたらしいんです。