近年増える熟年離婚。切り出すのは多くの場合、女性だ。なぜ彼女たちは離婚をしたがるのか。
まずは熟年離婚したケースから紹介しよう。
宮崎県出身の風間康子さん(仮名・62歳)は高校卒業後に上京して健康食品会社の事務職に就く。27歳のバレンタインデーの夜に、同じ年の広告会社の男性と出会い、その1年後に勢いで結婚。だが風間さんの結婚生活は、姑(しゅうとめ)の一言で揺らぎ始めた。
「結婚後すぐに夫が転職し、川崎市のマンションで新婚生活がスタートしました。東京都港区に住む夫の実家と距離を置いたのは、姑が私の宮崎なまりを馬鹿にしたからです。そのとき夫はまったくかばってくれませんでした」
方言をからかわれたことで、生まれも育ちも存在も否定された気がした風間さんは、孤独感が募っていく。だが、その姑を引き取り、介護して看取(みと)り、その間に3人の娘を育てあげる。ところが夫は「仕事があるから」と介護も育児も協力してくれなかった。
「一番つらかったのは、産後に友達の家で休養していたのに、夫が一度も訪ねてこなかったことです。家に帰っても、一言のねぎらいもありませんでした」
産後に夫の優しさが足りないために、ゆるやかに破綻(はたん)していくケースは、何も熟年世代に限ったことではない。育児中の妻を無視するような夫ならなおさらだ。
「『仕事があるから』が口癖の夫は子供の悩みも聞きませんでした。家のローンを払うために夫婦を続けている感じでした」
夫が女性と連絡を取り続けていたことを知った風間さんは、44歳の時に長女15歳、次女12歳、三女9歳を置いて家出してみたが、仕事が見つからず、子供のことも気になり、離婚を断念して家に戻る。だが、長女の進路を巡り大げんかし、再び離婚を決意。45歳でヘルパーの資格を、その後、介護福祉士の資格を取得し、58歳で離婚した。
「この人とずっと生きていけるか。60歳を前に出した答えはノーでした。尊敬もなければ、感謝の言葉もなかった夫婦でした」