一方、生物学的製剤でも、16年9月に「ルミセフ」という薬が登場し、治療の選択肢が広がっている。
炎症の原因となるサイトカインにはTNF−α、IL−23、IL−17などがあり、これらが過剰に増えて炎症を起こす。生物学的製剤はこれらに直接作用し、その働きを弱める薬だ。
ルミセフはIL−17の働きを弱め、皮膚の炎症を抑制する「IL−17阻害薬」というタイプの薬だ。皮下注射剤で、1回目の投与から1週後と2週後にも投与し、以降は2週間隔で投与する。注目すべき点は、皮疹の改善率の高さだ。
乾癬では、症状の程度と面積を点数化する「PASI(パシ)スコア」という評価方法があり、治療の効果は点数がどの程度低下したかで判定される。たとえばPASI90は、治療前と比べてスコアが90%以上改善したことを示し、治療の標準的な目標として使われている。
国内の乾癬治療の第一人者、日本医科大学病院皮膚科部長の佐伯秀久医師はこう話す。
「ルミセフはPASI90の達成率が87%。皮疹が完全に消える状態を示すPASI100の達成率が55%で、患者さんの約2人に1人は皮疹が消えるという極めて高い効果を持つ薬です」
生物学的製剤は、現在国内で六つの製剤が使用可能だ。佐伯医師によると、ルミセフは他のIL−17阻害薬に比べて、IL−17の作用を幅広く抑えるのが特徴で、強力な炎症抑制効果を発揮するのだという。
「重症で早めの治療が必要な患者さんに向いています。安全性が比較的高いので、高齢の患者さんにも向いていると言えます」(佐伯医師)
生物学的製剤全般に言えることだが、免疫力を低下させる作用がある。
「昔、結核になったことがある人は、再び結核を発症する可能性があります。そのほか肺炎や、口の中がカンジダなどの感染症になる可能性があるので、安全性を確認しながら治療していく必要があります」(同)
こうした効果が強力な生物学的製剤の登場で、佐伯医師は「乾癬の治療ではPASI100を目指せる時代になりました」と期待を示す。だが完治することは難しく、長く付き合っていく病気であることに変わりはない。
症状を悪化させないためには、ストレスをためないことや飲酒やたばこを控え、肥満の人は体重を減らすなど、生活習慣のなかで工夫することが大切だ。
※週刊朝日 2017年8月18-25号