そこにきて2010年以降、目覚ましい進歩で注目されているのが、バイオテクノロジー技術により開発された「生物学的製剤」という注射剤だ。皮下注射や点滴で投与する薬で、それまで治りにくいとされていた症状の重い患者にも効果が期待でき、皮疹が完全に消失する人も増えている。

 それでも藤本医師は言う。

「生物学的製剤は非常によく効きますが、治療費が高く感染症などの重い副作用が起こりえます。また注射剤に抵抗のある患者さんもいます。このため、さらに簡便かつ安全で、長期間継続して治療できる薬が求められてきました」

 八方塞がりにも感じるなか今年3月、乾癬の飲み薬としては国内25年ぶりの登場となった「オテズラ」に期待が集まっている。これは「免疫調節薬」というタイプの薬で、1日2回、朝と夕に飲む。乾癬は炎症の原因となる炎症性サイトカイン(後述)という物質のバランスが崩れることで発症するが、それを調整して正常に戻すことで、炎症を抑える働きがある。

 茨城県つくば市在住の林幸則さん(仮名・52歳)は、30代後半に乾癬を発症。自宅近くのクリニックにかかり外用療法を続けてきたが、4年前から皮疹が増え、徐々に悪化し始めた。

 かかりつけ医に相談したところ筑波大学病院の皮膚科を紹介され、藤本医師の外来を受診。重症の尋常性乾癬と診断され、外用療法に光線療法を併用した治療を開始した。だが、全身に広がった赤みを帯びた皮疹が改善せず、すっきりしない状態が続いた。藤本医師は内服療法や生物学的製剤の治療を提案したが、林さんは副作用の心配や注射剤に抵抗があり、新たな治療に踏み出せずにいた。藤本医師はオテズラの治療を勧め、今年4月から治療を開始。2カ月間服用した時点でかゆみが治まり、皮疹の程度や範囲が半分に減少するまで改善した。

「オテズラは生物学的製剤に比べると皮疹の改善効果は劣ります。しかし飲み薬のため利便性も高く、治療の継続も可能です。報告されている副作用もほとんどなく安全性に優れています。従来の治療法では満たされないニーズに応えてくれる薬で、今後は乾癬の中等症から重症患者の新たな切り札になるでしょう」(藤本医師)

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