こうした歩行速度や歩幅について、測定を受けたことのない人もいるだろう。歩幅については次のような方法で自己チェックができるので、やってみよう。
「横断歩道を渡るときに、白線を踏まずにまたぐことができていたら、合格点。横断歩道の白線は約45センチ幅でひかれています。足の大きさを考えると、つま先が白線上にあって、次の一歩のかかとが白線を越えていれば歩幅は約65~73センチになります」(同)
ところで、なぜ脳からもっとも遠い位置にある足腰の機能が認知症と関連するのだろう。そんな疑問に対し、谷口さんはこう説明する。
「歩くという動作は単純そうですが、実は脳では複雑な処理が行われています。目や足から伝わる情報を脳は瞬時に処理し、次の一歩を踏み出すように筋肉に指令を出します。このとき、障害物や路面の状態、体のバランスに応じた適切な歩幅になるように計算しています。歩行動作は、複雑な脳の情報処理や神経伝達が必要とされる動作なんです」
こうしたことから近年、認知症と歩行速度との関連が注目され、脳の画像検査や血流検査を用いた研究がさかんになった。そして、歩行動作に脳の多くの部分がかかわっていることがわかってきたという。
※週刊朝日 2017年4月7日号より抜粋