プロゴルファーの丸山茂樹氏が、フェニックス・オープンから調子が今一つ上がらない松山英樹選手にエールを送っている。

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 2カ月間滞在したロサンゼルスの自宅から、先日帰って来ました。まだ寒いですねえ、日本は。それに花粉! 僕はいくつかの薬を持ち歩いて対応してます。

 さて、2020年東京オリンピックのゴルフ会場になってる「霞ケ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)をめぐる問題で、大きな動きがありました。霞ケ関CCは3月20日の臨時理事会で、正会員の資格を男性に限定する定款の細則を改定して、女性も正会員になれるようにすると決めたんです。僕らはこのゴルフ場を「霞」って呼んでるんですけど、これで霞も世界レベルのコースの仲間入りができたんじゃないでしょうか。僕はほんとによかったと思ってます。

 そもそもは1月、東京都知事の小池百合子さんが霞について「21世紀に女性が正会員になれないのは違和感がある」と発言したんです。国際オリンピック委員会(IOC)も「差別を禁じたオリンピック憲章に抵触する」と言いだし、大会組織委員会や日本オリンピック委員会(JOC)などが2月に霞へ細則の改定を要請してたんですね。

 もう、これは世界の流れですからね。「マスターズ」が開かれるアメリカのオーガスタ・ナショナルGCも女性会員に門戸を開いたし、最近ではスコットランドの名門ミュアフィールドもそう。霞としても長年のルールでしょうけど、世界基準のゴルフ場を目指してやってきて、東京オリンピックの開催コースに選ばれてね。オリンピック仕様に改造もした。誇り高き霞ではありますけど、考え方を世界に合わせるのも大事なことでしょう。ここから新しい霞としてやっていけばいいんですよ。

 松山英樹(25)が「僕としてはできればオリンピックは霞でやってほしい」とコメントしてたように、多くのゴルファーにとって霞は思い出の場所なんです。英樹は10年に霞で開催されたアジア・アマチュア選手権で優勝して、初めてマスターズに出た。僕も中学、高校と霞で勝たせてもらってね。ジュニア時代は憧れのゴルフ場でした。まさに「聖地」ですよね。

 
 オリンピックを霞でやると聞いて、「いい選択だな」って思ってました。まだ東京との距離の問題なんかが残ってるみたいですけど、とりあえず一つの課題をクリアできてよかったと思います。

 英樹は先週の「WGCデルテクノロジーズ マッチプレー」(3月22~26日、米テキサス州のオースティンCC)に出ました。締め切りの関係で結果には触れられませんけど、これがマスターズ前最後の試合になりました。

 2月頭のフェニックス・オープンで優勝して以降、英樹はなかなか上向きません。コメントを眺めてると、本人の中で違和感を持ちながらゴルフをしてるみたいですね。まあ、どんなスーパースターでも1年間好調を維持するのは難しいです。一つ間違いないのは、この不調から脱出したとき、さらに英樹のゴルフには磨きがかかる。それがオーガスタの前なのか、後なのか。これは誰にも分かりません。

 不調のときに大事なのが「原点」です。僕はプロになってからも折にふれて父親にアドバイスを求めてました。英樹にもそんな原点を大事にしてほしいな。

週刊朝日  2017年4月7日号