フットケアの重要性が、一般にも広まりつつある (※写真はイメージ)
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 高血糖の状態が続き、初期には足の痛みや感覚麻痺などが起こる糖尿病神経障害。近年、生じる痛みを軽減する薬が増えてきた。細菌感染からの壊疽(えそ)を防ぐ、フットケアの重要性も一般に広まりつつある。

 糖尿病は血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌量が低下したり(インスリン分泌不全)、インスリンの働きが悪くなったり(インスリン抵抗性)することで発症する。高血糖状態が長く続くと、全身の血管が障害を受けて、からだのあちこちに合併症が現れる。

 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害を3大合併症という。進行すると網膜症は失明し、腎症は人工透析が必要となる。神経障害は足の切断などの危険がある。

 千葉県在住の橋本恵美子さん(仮名・45歳)は昨年、会社の健康診断で糖尿病と診断され、自宅近くのクリニックに通院し、食事療法の指導を受けていた。

 しかし3カ月が経ったころ、寝ているときに足がしびれることが何度もあったため、主治医に相談。すると糖尿病神経障害と診断され、経口の治療薬キネダックを処方された。

 2カ月間、薬を服用したが橋本さんの症状は改善しなかった。さらに夜、布団に入ると足先に痛みを感じるようになり、熟睡できない。そこで勤務先近くの東京慈恵会医科大学病院の糖尿病・代謝・内分泌内科を受診した。橋本さんを診察した診療部長の宇都宮一典医師は次のように話す。

「橋本さんが処方されたキネダックは神経障害を起こす原因物質と考えられている『ソルビトール』の産生を抑えることで、症状を改善します。キネダックは神経障害の症状が現れたときに使う第一選択薬です。糖尿病神経障害の原因にアプローチするこの薬で効果が不十分な場合は、痛みそのものを軽減する薬を処方します」

 糖尿病神経障害はおもに、手足の末端に痛みを感じる多発性神経障害と、下痢・便秘を繰り返す消化器症状やめまい、発汗障害、EDなどが現れる自律神経障害の二つに分けられる。多発性神経障害の場合、からだのすみずみまで伸びている末梢神経からダメージを受けるという原則があり、橋本さんのように足から、しかも両足同時に症状が現れるのが特徴だ。足先から始まった違和感や痛みは、やがて手の末端にも出る。まれに、胸部や腹部に痛みを感じることもある。

 糖尿病神経障害の痛みに対して、最近よく処方されるようになったのがリリカやサインバルタなどの鎮痛剤だ。ただし、この2種は、痛みを抑えるメカニズムが異なっている。

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