「足の痛みなど症状があっても、それが糖尿病と関係があるとわからず、放置している人も少なくありません。しびれや痛みなどは、障害を受けた神経が再生しようとしているという証拠です。しかし、神経の再生が、壊されるスピードに追いつかず神経障害が進んでしまうと、神経が荒廃して痛みなどを全く感じなくなってしまいます」(金澤医師)

 痛みなどを感じにくい感覚鈍麻という状態になると足が傷ついても気づかないことが多い。その結果、手当てが遅れたり、菌感染を起こしたりして、潰瘍や壊疽になることもある。壊疽は治りにくく、足を切断せざるをえないこともある。

 そこで最近は足の病変を早期に見つけ、適切なケア・治療をおこなうことを目的に、フットケアに力を入れる施設も増えている。金澤医師はこう話す。

「私は痛み、しびれなどの神経障害の症状を訴える患者を診るときは、必ず靴下を脱いでもらいます。そして、足にトラブルがないかを確認します」

 糖尿病神経障害を見つけるための検査や、フットケアをおこなうのは時間も手間もかかる。そのため残念ながら、外来でこれらが十分に実施されている医療機関は少ない。多くの糖尿病神経障害が見逃されているのが現状だ。

「ですから糖尿病と診断されたら、神経障害によるトラブルを早期発見するため、神経症状がなくても毎日足の状態を自分でチェックしましょう。入浴前に自分の足に触れて、足の感覚が鈍っていないかどうかを確認してください。また、自分で気が付いていないうちに足の裏や足の指の間に傷やまめ、たこ、靴擦れなどができていないかを見ましょう」(同)

 そして気になる症状が見つかったら、“これは糖尿病とは関係ないだろう”と自分で決めつけず、主治医に伝えて判断を仰ぐことが重要だ。

「一般的には血糖を良好にコントロールすることで末梢神経は再生しやすいと考えられています。しかし障害が重度になるとそれも難しくなります。また軽症でも、障害を受ける前と全く同じ状態の神経に再生するわけではなく、症状は軽減しても消失が望めないこともあります。ですから糖尿病だとわかったら、まず食事療法、運動療法、薬物療法などをしっかりして血糖コントロールを心がけて、神経をできるだけ壊さないように努力してください」(同)

週刊朝日 2016年12月16日号より抜粋