夫:僕は別に過去なんて気にしなかった。家庭を持ちたいという気持ちも特になかったし、長らく事実婚だったしね。
妻:そう、子どもを欲しいと思ったこともないし、「ただ一緒にいられればいい」と思っていた。家庭に憧れがなかったのは、二人ともあまり家庭に恵まれていなかったからかもしれません。
夫の思春期はかなり厳しいものだったようだ。小学校低学年のときに両親が離婚。養父となった人からはいつも暴力をふるわれていた。
夫:僕は子どものころ、頭はよかったんです。本もものすごく読んでいた。本の世界だけが自分の居場所だったというか。でも両親が離婚して、小学校から中学まで養父に本を読むのを禁じられていたんです。
妻:「本を読んでると頭でっかちになる!」って言われたんだよね。
夫:しょうがないから釣りに行くふりをして図書館に行っていた。高1で『マルクス主義入門』とかを買っていたので、書店のおじさんに目をつけられて「本当にそれ、自分で読んでいるのか」って言われました。
妻:高2くらいから親とも離れて、ほとんど一人で生きてきたんだよね。
夫:別にいまも付き合いがないわけじゃないですが。
妻:彼から子ども時代の話を聞いたときは、けっこう衝撃的でした。でもうちの両親も離婚しているんです。そのせいか二人とも「理想の家庭」みたいなのがまったくなかった。
夫:ライフスタイルが合っていればそれでいいんじゃないか、と。
妻:07年に籍を入れたのも、スポーツジムに申し込みに行ったら「家族のほうが入会金が安い」って言われたからなんです(笑)。
※週刊朝日 2016年9月9日号