新監督に就任した金本知憲氏と握手する、坂井信也オーナー(左) (c)朝日新聞社
新監督に就任した金本知憲氏と握手する、坂井信也オーナー(左) (c)朝日新聞社
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「タイガースは消滅しました」

 阪神タイガースの坂井信也オーナーが、7月11日のオーナー会議後、こんな言葉を口にした。首位のカープに7連敗し、15.5ゲーム差の最下位。そんな状況で自力Vも「消滅」と、自虐的なジョークのようだったが、激怒するファンも多かった。

 東京の阪神ファン第一人者の山藤章二氏は、オーナー発言を「立場上ふさわしくない」としつつ、“夢”が遠のいたと感じているファンのいらだちが背景とみる。

「タイガースファンには独特の気質があって、常勝は望んでいないんです。まれに奇跡的に“猛虎”の年になるのを望んでいます。20年に1回くらい、そういうことがあれば、残りの19年は我慢するのです。ただし、チームにその『気配』がないとだめ。今年はそれがない」

 一方で、「歴代オーナーも、時折あぜんとさせられる言葉を残されている。今回もそのひとつ」とみるのは、『阪神タイガースの正体』の著者、井上章一氏。

 井上氏によると、昭和30年代ごろまでの大阪は、阪神より南海ホークスのファンが多かった。「アンチジャイアンツも御堂筋の優勝パレードも南海が先で、そこから阪神に移りました。南海はなくなったが、阪神が消滅したら、いっときは嘆き悲しむ人がたくさん出ます。でもそれは、プロ野球の長い歴史の中では、うたかたのようなものかもしれません」という。

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