栗色のショートヘアに赤い口紅。華やかな雰囲気の愛子さんが言う。

「彼は人柄が良くて、入居者の方にもモテモテなの」

 そんな愛子さんを、白髪の透さんが目を細めて見る。

 愛子さんは再婚で3人の娘がいて、透さんは再々婚で、息子と娘が2人ずつ。先日ひ孫も生まれた。二人の距離が近づいたのは、愛子さんがあるとき急に体調を崩したことがきっかけ。

「休日に一緒にドライブして、そのまま彼の家に泊まって夜通しおしゃべりしたの。翌日あまり寝ないで仕事に行ったらめまいがして」

 慌てた透さんは愛子さんを車で病院に連れていき、点滴の間、一日付き添った。元気になった愛子さんに、透さんは指輪を渡して言ったそうだ。

「君を一生介護したい」

 施設の会長や仲間のスタッフに祝福され、二人は入籍。だが愛子さんは、切なそうな顔をするのだ。

「幸せよ。でも娘は、婚姻届まで出したとは思っていなかったようで、『孫にも言えない』って」

 信頼し合って法律婚をしたのに、親類から愛子さん宛てに来る手紙には、「○○様方○○愛子様」と旧姓が記されることもあるという。入籍から始まる、新たな問題もあるのだ。

 総合解決法律事務所の代表弁護士所長の兼子裕さんは言う。

「子供の反対を押し切った親の再婚で子供との間にできた溝を埋めるには、子供が本当は何に反対しているかを探ることが大切です。そのためにも、まずは家族でコミュニケーションを取ることが大事です。親が恥ずかしがらずにイニシアチブをとり、子供と会う時間を増やせると良いでしょう」

 これは事実婚にも言えることだという。

 子供との間に利害や打算などがあっても、疎遠なままでは関係は築けない。伴侶の「味方」となる人物を見つけるのも大事だ。

週刊朝日 2016年2月5日号より抜粋

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