調節疲労の原因で意外に気づかないのが、「合っていないメガネ」だ。鈴木眼科吉小路院長の鈴木武敏医師は、これを眼精疲労の最大の原因と言う。
「私は、日本人の半数以上は合っていないメガネをかけていると思っています。そうなる理由の一つは、視力検査を元に度数を決めることにあります」
視力検査では、片目ずつ、アルファベットの「C」のような図形(ランドルト環)を見て、切れ目がどこにあるかを答える。
「多くの人は、切れ目がよく見えなければ目を凝らし、何とか見ようと努力するので、検査の間、毛様体筋は過剰に緊張しています。メガネは、リラックスした状態で快適に見えるものであるべきですが、視力検査を指標にすると、毛様体筋が懸命に頑張った状態に合わせることになります。そのため近視の人では『過矯正』、遠視の人では『低矯正』になることが多いのです。そうやって作ったメガネをかけていると眼精疲労を起こします」(鈴木医師)
度数を決めるときは、機械に顎をのせて中をのぞき込む自動屈折計も使われる。これは度数が強めに出るので、そのままメガネの度数にすると過矯正になる。
鈴木医師がすすめるのは、「レチノスコピー」という検査だ。度数の違うレンズを1枚の板にまとめた器具を片目にあて、患者の目の中に光を投影する。眼底から反射する光の動きによって検査レンズの度数が合っているかどうかわかる。しかし、熟練した眼科医か視能訓練士にしかできないので、実施施設が限られる。
お目当ての眼科でレチノスコピーが受けられるかどうか知りたいときは、「視力検査ができない子どもや認知症のお年寄りでもメガネ合わせができるか」と聞くとよい。「できる」と答えたら、レチノスコピーをやっていると思っていいそうだ。
「メガネは医療機器ですから、作るときはいきなりメガネ店に行くのではなく、まず眼科を受診して必要な検査を受け、ほかに病気がないか確認してもらってから、あなたに最適なレンズの処方箋を書いてもらってください。それが目を疲れさせない第一歩です」(同)
※週刊朝日 2015年12月25日号より抜粋