本来は中高年に多い眼精疲労が、スマートフォンの普及とともに若い人にも増えている。たかが目の疲れと軽視していると、心身の不調に陥って日常生活に支障をきたすこともある。症状改善のカギは、適切なメガネをかけることだ。
東京都在住の会社員、柳原啓子さん(仮名・42歳)は、数年前から目が疲れるようになり、肩こりがひどくなった。頭痛やめまいにも悩まされ始めた。
会社ではおもにパソコンで文書を作成している。慣れた仕事だったが、文字がダブって見えるようになったため、以前より時間がかかるようになり、ミスが増えた。欠勤も多くなった。
上司から「やる気がないなら辞めていいんだよ」と言われてうつ状態になり、心療内科に通っているが改善しない。退職すれば再就職が厳しいことは明らかで、その後の生活が不安だ。目の疲れだけでも何とかしたいと、梶田眼科を受診した。
梶田雅義医師は、目の疲れを訴える人には、一般的な眼科検査のほかに、調節機能の検査と斜位の検査を実施する。前者は毛様体筋の疲労度や老眼の程度がわかり、後者は安静眼位がわかる。
検査の結果、柳原さんは老眼と毛様体筋の疲労があり、強度の外斜位だった。梶田医師は、症状を和らげる点眼薬として、毛様体筋の働きを整えるネオスチグミン配合薬と、眼筋の疲れをとるビタミンB12配合薬を出し、同時に、プリズムレンズの遠近両用メガネの処方箋を出した。
遠近両用メガネは老眼だけでなく、調節疲労の人に適している。プリズムレンズは、斜位の人が両目でものを見るのにかかっている負担を軽減する。
プリズムレンズは鼻側と耳側で厚みが違い、三角になっている。光は、プリズムを通過するとき厚いほうに曲がるため、外斜位では鼻側を厚くすることで、内寄せするときの負担が少なくなる。
柳原さんはさっそく処方箋を持ってメガネ屋に行き、新しいメガネを作った。慣れるまでに2週間ほどかかったが、一日中パソコン作業をしても疲れにくくなり、肩こりなどの症状も軽くなった。欠勤がなくなり、仕事で本来の力が出せるようになって、「会社を辞める前にここに来て本当によかった」と喜んだという。