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 最近は介護の現場で「食べる力」に注目する動きが強まっている。その背景には厚生労働省が昨年4月、胃ろうを外せる患者を増やそうと診療報酬を改定したことがある。

 こんなデータがある。一般財団法人「医療経済研究機構」(東京都港区)が12年度、全国約7700の病院と施設を対象に実施した調査によると、胃ろうをつけた人のうち、食べ物などをのみ込む機能を確かめる「摂食・嚥下機能評価」を手術前に受けなかった人は22.9%。また、胃ろうを作った後で口から食べられるようにするための訓練をしていないのは47.4%に達していた。そんななかで厚労省は今回、局所麻酔で10~15分程度で胃ろうが作れる手術法「経皮内視鏡的胃ろう造設術(PEG)」の診療報酬を4割下げ、「胃ろうは本当に必要か」を調べるためののみ込み機能の検査や術後のリハビリへの加算を手厚くしたのだ。

 こうした現状を変えようと活動する人たちが出てきている。その一人が日本歯科大学教授で、「口腔リハビリテーション多摩クリニック」(東京都小金井市)の菊谷武院長だ。口腔リハビリの専門クリニックとして12年10月に開業、これまで延べ2千人の“食べる力の回復”に尽力してきた。

「その人の状態に合ったリハビリを続ければ、多くは口から食べられるようになり、生きる意欲を取り戻すことができるんです」

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