分譲マンションの老朽化とともに、居住者の高齢化も進行している。国土交通省が5年ごとに実施している「マンション総合調査」によると、世帯主の高齢化率は年々上がっていて、2013年度は60歳代以上の割合が全体の半数を超えた。前回に比べて1割ほど上昇、14年前に比べて約2倍になっている。

 こうした結果を踏まえ、建て替えや大規模修繕などのハード面だけでなく、高齢で独居の“おひとりさま”たちをどう支えていくのかが喫緊の課題になっている。隣人との接点や近所付き合いが少なく、孤独死につながる不安がつきまとうからだ。

 分譲マンションは、購入者が「管理組合」を組織し、維持管理をする。業務を委託された管理会社から管理人が派遣され、ゴミ出しや清掃などを担う。管理組合は、老朽化による建て替えや大規模修繕など、土地と建物を維持管理するのが目的。だから、住民同士の見守りや親睦を図る自治会とは違う。

 分譲マンションは、購入者が「管理組合」を組織し、維持管理をする。業務を委託された管理会社から管理人が派遣され、ゴミ出しや清掃などを担う。管理組合は、老朽化による建て替えや大規模修繕など、土地と建物を維持管理するのが目的。だから、住民同士の見守りや親睦を図る自治会とは違う。

 また入り口であるエントランスのドアがオートロック式ならば、民生委員なども簡単には敷地内へ入れない。異変が放置され、医療や支援に結びつかないまま、症状を悪化させる高齢者は増えているのだ。

 だが、住民同士で高齢者の生活支援に力を入れているマンションもある。代表例が、東京湾を一望する海岸地帯を埋め立ててできた「よこすか海辺ニュータウン」の一画にある「ソフィアステイシア」(神奈川県横須賀市)だ。03年3月から入居を開始し、4棟14階建て309戸に約千人が暮らす。

 10月中旬のある朝、記者が訪ねると、共用部分の「ガーデンサロン」と呼ばれる部屋で、女性たち十数人が音楽に合わせ、介護・認知症予防のための体操をしていた。

 このマンションは05年、管理組合とは別に「自治会」を発足させた。その傘下にある「長寿会」が、介護・認知症予防体操などのサークル活動やイベントを定期的に催している。趣味を楽しむだけでなく、高齢者のひきこもりや孤独死を防ぐための見守りや安否確認を兼ねている。

 居住者は管理組合と自治会の両方に加入し、両組織をつなぐ“パイプ役”として兼任理事が設けられている。初代自治会長で、現在連合自治会会長の安部俊一さん(66)が説明する。

「いつも顔を合わせるメンバーの一人が何の連絡もなく欠席したら『◯◯さんどうしたの?』と、安否を心配する声が自然と上がる。日頃の交流が、お互いの安否確認につながっているのです」

 また自治会発足と同時に災害や事故・急病に備えて「居住者台帳」を独自に整備。それぞれの緊急連絡先のほか、血液型やかかりつけ医、既往症、常用薬、自力避難に支障があるのかまで詳しく記されている。

「最初は『行政にも伝えない個人情報を、なぜ自治会に伝えなければならないのか?』と抵抗する人もいましたが、『命より大事な個人情報はない!』と説得したんです」(安部さん)

 その結果、こんな効果があった。一人暮らしのヤスコさん(仮名・70代)が徘徊をするようになった。認知症の症状が現れ始めた。当時自治会長だった安部さんが動いた。

 例えばヤスコさんは外出した後、オートロックのエントランスから入れなくなった。安部さんが管理人に連絡し、ヤスコさんが玄関前で立ち往生していたら自宅まで誘導するように伝えた。

 ヤスコさんが、部屋番号を忘れ、よく似た玄関が並ぶマンションの中で自宅がわからなくなってしまったときは、「ご近所の人が家まで連れていってあげてほしい」と居住者に伝える一方、「居住者台帳」から北海道に住む長男に連絡し、最終的には施設に入れた。

週刊朝日  2014年11月14日号より抜粋