東京大学は来年秋から推薦入試を導入し、後期入試を全廃することを昨年3月に発表した。東大初の「推薦入試」は注目され、さまざまなメディアで報じられた一方、「後期入試の全廃」の是非が論じられることはなかった。
後期入試を全く実施しない国公立大学は22校もあり、珍しいことではない。旧帝大では京都大学が全廃しているほか、名古屋大学も医学部医学科のみでほとんど実施していない。
国公立大学が前期・後期で入試をするのは、そもそもどのような目的だったのか。坂口幸世・代々木ゼミナール入試情報センター統括本部長が解説する。
「本質的に大学の募集戦略とは無関係です。もともと国公立大学を1回しか受験できないことに反対する世論があり、それを沈静化させようと生まれた制度だからです。受験生は少なくとも前後期で2回の受験チャンスが存在しますから、精神的な重圧は軽減されていると思います」
国公立大受験の負担を軽減させるため、1949(昭和24)年から78年にかけて、「一期校・二期校」という制度があった。受験日が異なる一期校と二期校を併願できる仕組みだ。当時の受験生は、今の50代半ばから80代半ばとなる。
しかし、基本的には旧帝大などの“名門大学”が一期校とされ、入試は3月上旬に実施。一方の二期校は下旬に実施されたため、「二期校は一期校の滑り止め」というイメージを持たれてしまう問題があった。
79年に共通1次試験が実施されるとともに、「一期校・二期校」制度は廃止され、国公立大学入試は“一発勝負”の時代になった。
そして再び制度が見直され、現在の「前後期」分離分割方式が始まったのが、平成の幕開けと同じ89年だ。
この制度では、「一期校・二期校」と異なり、「前期も東大、後期も東大」と同じ大学を連続して受験することができる。加えて相当数の大学が、後期試験では小論文や面接といった人物重視の受験科目を設定するなど、試験内容を変えることで、多様な学生を確保しようとしてきた。
後期入試を「今後も基本的には実施する」という北海道大学の喜多村昇・アドミッションセンター副センター長はこう話す。
「北大は前期試験で入学後に進学する学部を決められる総合入試も実施し、後期は学部で募集しています。将来が明確ではない人なら前期、進路を決めた人は前後期の両方と、門戸の多様性を確保するためです」
※週刊朝日 2014年4月4日号