東大から、他大学の医学部へと志願者が流れた今年の大学受験の余波が、東大合格者のランキングを変えた。駒場東邦(東京)、豊島岡女子学園(同)、聖光学院(神奈川)などが合格者数を増やし、順位を伸ばした。

「以前の東京の私立の進学校にはさほど“医学部人気”はなかったのですが、今年はついに波がきた。理系で大学院まで進んで就職先に困るなら、同じ6年間を医学部で学びたいと将来性を求めたのでしょう」

 そう話すのは教育情報会社「大学通信」の安田賢治・常務取締役だ。

 今年の東大合格者の私立上位3校は開成(東京)、灘(兵庫)、麻布(東京)。昨年と同じ顔ぶれながら合格者数は170人→158人、105人→103人、82人→81人と減少。安田氏が続ける。

「東大合格者の多い高校の生徒が医学部に移ると、東大合格者は減る。東大理IIIは超難関なので、他の国公立や関東の難関私大医学部を受けるケースが出てくるからです」

 そんな上位組に迫る勢いで、前年より16人多い合格者を出したのが駒場東邦。進学指導係主任の佐藤仁志教諭は話す。

「今年は現行課程最後の入試で安全志向が強いと言われましたが、本校は例年通り『行きたいところにチャレンジを』と指導した。東大に限らず、第1志望を変えなかったことが良い結果につながったと思います」

 前年比9人増は聖光学院。1964年に東大合格者を出して以来、初の70人の大台に。だが高1のときは例年より成績が悪く、生徒にも教師にも焦りがあった、と花家徹・教務部副部長が明かす。

 
「トップ層は例年通りでしたが2番手以降が芳しくなく危機感を感じた。けれど第1志望は変えず、学校の授業や補習を真面目に聴き、最後に学力がぐんと伸びた感じです」

 また、東大志望者は100人を超えるが医学部志望は3割ほど。「東大志願者の多さ」が好結果につながったのかもしれない。

 女子校はどうか。安定した実力の桜蔭(東京)は68人で今年も1位。じわじわと上位に忍び寄るのが豊島岡女子学園で、この3年で25人→27人→33人と増加。開校以来、毎朝の「運針」(布を針で縫う)が日課という“堅実さ”が売りだ。

 飛躍の原因を教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、こう分析する。

「89年に中学の入試日をずらすことで他校を落ちた優秀な生徒が確保できた。また、学校がある池袋に埼京線が通るなど交通の利便性が高まり、学校自体に人気が出たのも大きいです」

 さらに豊島岡の教師の努力も相当大きかったようだ。

「ノートの添削に、一人の先生が1年で赤ペンを40本使ったと聞いています」(おおた氏)

週刊朝日 2014年4月4日号